研究課題/領域番号 |
19F19407
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
竹本 佳司 京都大学, 薬学研究科, 教授 (20227060)
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研究分担者 |
RAY CHOUDHURY ABHIJNAN 京都大学, 薬学研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2019-11-08 – 2022-03-31
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キーワード | メソ型ジケトン / 不斉非対称化 / 二官能性有機触媒 / α水素脱プロトン化 / エポキシド |
研究実績の概要 |
本年度は、メソ型2,3-エポキシ-1,4-シクロペンタジオンのα水素脱プロトン化を利用した遠隔位不斉第4級炭素の構築に焦点を当てて検討した。まず5位にメチル基とベンジル基を有するメソ型2,3-エポキシ-1,4-シクロペンタジオンを1,3-シクロペンタジオンから4工程で合成した。またこの研究計画の成功の鍵を握るのが適切な塩基性を有する不斉触媒の設計であるが、塩基部位に第3級アミン、イミノホスホラン、第4級アンモニウム塩を、水素供与体として尿素やチオ尿素等を有する2官能性触媒をそれぞれ合成することにも成功した。そこでα水素の脱プロトン化とそれに続くエポキシの開環を伴ったエノール互変異性による1,2,4-シクロペンタトリオンの不斉合成を目指し、種々のキラルな塩基性尿素触媒との反応を試みたが、ウレアやベンゾチアジアジン触媒では反応は進行せず原料回収に終わった。一方、チオウレア触媒を用いた場合にのみ反応は進行し、さらにチオウレア触媒を当量使用すると原料が消失したことなどから、得られた化合物は所望のケトンα位の脱プロトン化体ではなく、触媒の硫黄原子がエポキシを開環したのちチイラン経由でチオエノールを生成し、続いてもう一分子のエポキシドと反応して生じた硫黄原子が架橋したダイマー体であることが判明した。さらに生じた生成物はほぼラセミ体であることも分かった。 そこで、チイランを形成しないと考えられる様々なチオール求核剤存在下でチオ尿素以外のキラル触媒を用いてエポキシドの不斉開環反応を試みたが、収率もエナンチオ選択性も低いものであった。また基質ケトンα水素の脱プロトン化の加速を期待して、触媒の第3級アミノ基をより塩基性の強いイミノホスホランに替えた触媒を別途合成して試したが、複雑な混合物を与える結果に終わった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)5位にメチル基とベンジル基を有するメソ型2,3-エポキシ-1,4-シクロペンタジオンを1,3-シクロペンタジオンから4工程で合成した。 (2)成功の鍵を握る2官能性触媒について、塩基部位に第3級アミン、イミノホスホラン、第4級アンモニウム塩を、水素供与体として尿素やチオ尿素等を有する触媒を合成した。 (3)α水素の脱プロトン化とそれに続くエポキシの開環を伴ったエノール互変異性による1,2,4-シクロペンタトリオンの不斉合成を検討したが、実際にはチオ尿素触媒の硫黄原子がエポキシを開環したのちチイラン経由でチオエノールを生成し、もう一分子のエポキシドと反応して硫黄原子が架橋したダイマー体を生成するという興味深い現象を明らかにした。 (4)チイランを形成しないチオール求核剤を用いてエポキシドの不斉開環反応を試みたが、収率もエナンチオ選択性も低いものであった。さらに第3級アミノ基をより塩基性の強いイミノホスホラン型触媒を合成し反応に付したが、複雑な混合物を与える結果に終わった。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、(1)メソ型―2,3-エポキシ-1,4-シクロペンタジオンのα水素脱プロトン化を利用した遠隔位不斉第4級炭素の構築に焦点を当てて検討する。この目的を達成するために、まず5位に異なる置換基を有するメソ型2,3-エポキシ-1,4-シクロペンタジオン体の簡便な合成法を確立する。また求核性に乏しくかつ強力な塩基性を有する新たな塩基性不斉触媒を設計し、不斉合成する。さらに、合成した反応基質をキラルな塩基触媒で処理することで、α水素の脱プロトン化とそれに続くエポキシドの開環を伴ったエノール互変異性化を起こさせ、5位に第4級不斉炭素を持つ1,2,4-シクロペンタトリオンの不斉合成を目指す。この触媒的不斉非対称化を検討するために、反応条件の精査に必要となるメソ体のシン体とアンチ体の基質合成と種々の二官能性触媒の合成を並行して行う予定である。この研究計画の成功の鍵を握るのが適切な塩基性を有する不斉触媒の設計であるが、塩基部位に第3級アミン、イミノホスホラン、グアニジン、第4級アンモニウム塩を、水素供与体として尿素や水酸基等を有する二官能性触媒を想定している。所望の基質と触媒の合成が完了したら、触媒的不斉非対称化を順次検討してゆく計画である。
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