研究課題
感染症の制御は、高度グローバル化社会における重要な課題である。マダニは、ヒトと動物双方への感染症伝播において、蚊に次ぐ重要な節足動物であり、宿主を吸血し、貧血・皮膚損傷等の直接的な被害だけでなく、多種多様な細菌・ウイルス・原虫・リケッチア等の病原体を宿主に感染させる間接的な被害をもたらす。このようなマダニとマダニ媒介感染症の制御を目的とする殺ダニ剤処方は、多くの場合宿主や環境に過負荷となり、全地球規模の殺ダニ剤抵抗性の顕在化に寄与する。そこで本研究では、殺ダニ剤の代替手段として、マダニの代謝経路や病原体媒介能力を阻害し、マダニやマダニ媒介感染症の生活環を遮断する新たな制御技術の開発を企図する。本研究では、吸血によって中腸に取り込まれた宿主血液の消化及び病原体の伝搬に関与するマダニ蛋白質を『吸血・病原体伝播調節物質』と称し、本物質について、組換え蛋白質などを用いた生化学的機能解析や細胞解析によって、その分子機能を明らかにする。解析を行ったマダニ分子は、マダニや病原体の生活環を遮断するワクチンの候補分子であるかどうか、動物試験やin vitro試験によって実証し、現行の防除法に代わる有効で安全性と持続性の高いマダニ防除及びマダニ媒介感染症制御技術の確立を目指す。本年度は、マイクロアレイ解析の結果得られた11個の遺伝子のうち、マダニ胚特異的なキチナーゼ様遺伝子の全長クローニングに成功し、Parental RNAiの結果、孵化が阻害されるという表現型を得ることができた。また、興味深いことに本遺伝子mRNAの3’末非翻訳領域が1kbを超える長鎖であることが判明し、偶然にもこの領域に作製したdsRNAによって、マダニでは初となるRNAa効果を確認することができた。マダニにも保存されたRNAaのメカニズムは科学的に極めて興味深い。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2021
すべて 学会発表 (2件)