研究課題/領域番号 |
19F19703
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
しゃ 錦華 東京工科大学, 工学部, 教授 (10257264)
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研究分担者 |
ZHAO KAIHUI 東京工科大学, 工学部, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 永久磁石同期モーター(PMSM) / 消磁 / NTSMO / NFTSMO / 分数次数位相ロックループ / センサーレス速度/位置制御 |
研究実績の概要 |
永久磁石同期モーターにおいて、その永久磁石は高温や高速により減磁場が生じ、また固定子短絡により回転子の減磁が生じるなど、界磁の異常は運転に支障をきたすだけでなく、モーターに機械的な損傷をもたらすため、様々な動作条件下で永久磁石同期モーターの減磁故障を素早く検出し、いち早く故障許容制御を行うことは非常に重要である。 2019年度は、永久磁石同期電動機の減磁故障診断と速度センサーレス制御を検討した。具体的に, (1) 永久磁石同期モーターのトルク制御精度を向上するために、nonsingular terminal sliding mode observer (NTSMO) を永久磁石の減磁検出に拡張し、永久磁石同期モーターの高精度トルク制御手法を提案した。まず、永久磁石同期モーターの減磁現象を表現する数学モデルが提案し、次に、NTSMOを用いて、d-q座標系で永久磁石の磁束鎖交を再構築した。また、このオブザーバーの推定安定性も証明した。モータートルクは、このNTSMOにより推定された永久磁石の磁束鎖交から計算できる。最後に、シミュレーションにより本手法の有効性を検証し、従来のスライディングモードオブザーバーに比べて、駆動系のトルク制御精度が向上され、鉄道車両の走行性能を満足していることも明らかになった。 (2) Nonsingular fast terminal-sliding-mode observer (NFTSMO) と分数次数位相ロックループを融合した新しいセンサーレス制御法を提案した。まず、NFTSMOを構築してd-q座標系における逆起電力を推定する。次に、分数次数位相ロックループを用い、ローターの速度と位置を高精度に追従できる制御系を構築する。この制御系は、速度とトルク変動に対してもロバスト性の高い優れた制御性能を持っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従い、まずはHardware in the loop (HIL)型の実験環境構築など研究準備を行った。思ったより早く研究環境が整い、すぐに研究に集中できた。また、センサーレス制御も順調に完成し、結果を論文にまとめ、国際会議で結果を発表した。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度には、以下のように研究を推進する予定である: (1) 永久磁石同期モーターの減磁故障を再構築し、減磁故障に対してフォールトトレランス制御を実行するために、improved sliding-mode observer (ISMO)に基づく等価入力外乱(EID)手法を提案する。 (2) 減磁故障における永久磁石同期モーターのセンサー制御を実現するために、variable-gain sliding-mode observer (VGSMO)と有効磁束鎖交に基づくfractional-order phase-lock loop (FO-PLL)手法を提案する。この手法はスライディングモードのチャタリングが有効に抑えられるという特徴を持っている。 (3) 減磁故障における永久磁石同期モーターのトルク高精度制御を実現するために,super-twisting-algorithm sliding-mode observer (STA-SMO)に基づく制御法を提案する。この手法は回転子の磁束を正確に推定できるため,トルクを高精度に制御することが可能である。また,スライディングモードの振動を素早く除去できるという特徴を持っている。本研究ではリアプロフ安定性理論に基づき,STA-SMOの安定性についても詳しく導出する。 (4) 減磁故障における従来のPI制御が外乱に影響されやすく,定常電流に高調波成分がたくさん含まれるなどの問題が存在している。それらを解決するためにsliding-mode control (SMC)とmodel-predictive control (MPC)を融合した制御手法新たに導入し,指数安定を実現できる制御則を新たに設計する。特に,有限集合を持つファジー予測制御により,d-q軸電流を制御し,減磁故障による電流の高調波成分が低減できることを明らかにする。
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