研究課題/領域番号 |
19F19713
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
幸田 正典 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (70192052)
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研究分担者 |
SOWERSBY WILLIAM 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2019-11-08 – 2022-03-31
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キーワード | カワスズメ科魚類 / 睡眠 / レム・ノンレム睡眠 / 記憶力 / 学習実験 / ホンソメワケベラ / 水槽飼育実験 |
研究実績の概要 |
申請者のソエスビーさんの来日は約2ヶ月近く延びたため、初年度は4ヶ月しかなく、このため研究内容は大幅に変更になり、主に大阪市立大学の実験室での魚類の行動実験を主に行った。大きくは2つのテーマを考え進めた。1つは対象魚の協同的一妻多夫魚ジュリドクロミスの社会性の複雑さの程度と脳の形状の変化の確認実験である。我々は、魚類の脳は哺乳類などと比べ大きさや形の可塑性が相当に高いと考えている。すなわち、社会関係が複雑で多様な場合は関与している社会脳は発達するし、単純な社会ではそのほかに脳部位が割かれると考えている。現在は本種を購入し、実験に使えるよう成長させているところである。既に実験開始が可能であるが、現在彼は3/26から新型コロナ肺炎のため帰国し、研究は中断している。 もう1つのテーマとして、魚類の睡眠について研究を展開させている。対象魚はホンソメワケベラである。現在、共同研究として、睡眠レベルの夜間での変動を解析している。当初考えていたように、哺乳類のようなレム・ノンレム睡眠とは一致しないことがわかり始めている。さらに、睡眠が記憶におよぼす影響について、本種で飼育実験を開始した。2グループ用意し、片方には十分な自然状態での睡眠を、もう片方には夜間何度も照明を当て、睡眠を妨害する状況を作る。昼間に学習課題を与える。予備実験ではあるが、十分睡眠したグループは物覚えがよく、逆に睡眠不足の集団は、覚えが悪かった。この結果は睡眠が魚類の記憶にとっても重要な意味を持つことを示しており、本人が復帰し次第、実験を展開していくつもりである。この実験は、大学の研究室での実験であり、展開させることができる。魚類にとっての睡眠の意味を直接扱ったような研究はなく、独創性が高い研究に発展する可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は事実上、4ヶ月しかない。始まってわずかな期間に、魚類における睡眠の記憶力に対する効果というこれまで前例のない独創的研究に着手し、予備的ではあれ、一定の成果を見出している。現在、新型コロナ肺炎の影響で長期間帰国しているが、復帰後はおそらく複数の実験を同時並行的に推し進めてくれるものと期待できる。現在、母国オーストラリアと日本で連絡を取り合っているが、本人は早い復帰を望んでいる。 また、これとは別に、いくつかの我々の研究室での研究について、共同研究の形で研究に参加している。例えば、ホンソメワケベラの鏡像自己認知の検証研究やさらに発展させた研究デザインなどを共同で議論し、彼が独自に愛でを出すことも多く、それらのね面でも間違いなく充実した日を送れている。まだわずか4ヶ月の経過であり、評価できるほど時間も経っていないが、ソエスビーさんの滞在および特別研究員としての滞在は概ね順調に進んでいると言って差し支えない。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナ肺炎の影響もあるため、今後のアフリカでの調査は全く予定が立たない。また、国内の沖縄や四国での野外調査も現在のところ具体的な計画は立っていない。これに対し、本学理学部の水槽実験室での行動実験は、先ほど述べた、睡眠が魚類の記憶力や行動に及ぼす影響、魚類の睡眠の実態解明など、睡眠に関する一連の共同研究は実施ていると思われる。対象魚はホンソメワケベラであるが、一定の成果が出れば、カワスズメのプルチャーでも実施する。また、ホンソメワケベラの鏡像自己認知に関連する諸研究も共同研究として今後実施していく。 複雑高度な社会的環境に対する脳の柔軟性に関する研究も彼の独創であり、これも期間内に終了できる実験かと考える。これら、飼育水槽でできる研究に絞って今後は進めていきたいと考えている。
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