前年度末の時点では Schubert 胞体上のアソシエーションスキームの隣接関係の記述について厳密な証明を与えることに成功したと思われたのであるが、その後残念ながら議論にギャップが見つかった。このテーマについてはこれまでの考察を何らかの形で論文にまとめることを検討している。一方、Xu 氏は宗政昭弘氏と共同で、「semibiplane」と呼ばれる特殊な1-デザインの特徴付けに関する研究を新たに行った。1-デザインから定義されるある種の半正定値行列を超立方体の Terwilliger 代数と呼ばれる非可換半単純行列代数に射影することで、ある不等式を示すことができる。若干追加の仮定を課した上で、1-デザインが semibiplane であることと、不等式で等号が成り立つことが同値であることを証明できた。「追加の仮定」を外すことができるかは今後の課題であるが、この研究は本来計画していた Schubert 胞体上の Erdos-Ko-Rado 型定理の確立を目指す上で想定していた代数的手法と密接に関連しており、本研究課題に即したものと考える。この研究成果もまた、後日論文にまとめる予定である。補助金の使途予定については研究打合せや学会等参加のための旅費が大部分を占めていたが、新型コロナウイルスのため、出張に出ることは結局できなかった。研究の遂行への影響は少なからずあったが、その渦中で取り組んだ宗政氏との共同研究は大変興味深いものであり、今後他の様々な組合せ構造の研究への応用が十分期待できる。
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