研究実績の概要 |
熱を電気に直接変換する熱電材料の応用が期待され、最近は室温近傍のエネルギーハーベスティング応用が注目される一方、高温での、火力発電所のトッピングサイクルなど、省エネに大きく貢献できる応用も期待されている。本研究では、ターゲット材料として、最近高温で高性能熱電材料として注目を集めたTh3P4型構造のR3Te4化合物などの材料を調べ、研究開発を行った。本年度は、希土類依存性を調べるために初めて単相の高純度のPr3Te4化合物の合成に成功したが、機械的性質が脆弱であることが新たに判明して、他のTe化合物の方が将来的な実用化に適していることを明らかにした。GeTe化合物において、珍しいドーパントとして、Y, Zr, Hf, V, Nb, Mo, Ruを理論と実験の双方で、高性能化への指針を出すための調査を行った。バンドギャップ、2つの価電子バンドの最大値間のエネルギー差、ドーパントまたは不純物状態の性質、およびフェルミ準位に関するそれらの位置、の作用をそれぞれ明らかにした(J. Mater. Chem. Aのhot paperに選ばれfront coverにもフィーチャーされた)。また、SnTe化合物において、複数のキャリア―散乱機構の制御による熱電出力因子の高性能化および化学結合の予想外の脆弱化による熱伝導率の低減の、双方熱電性能を増強する効果を明らかにした(論文投稿中、minor revision)。一方で、テルライドTe化合物だけでなく、同じくカルコゲナイド系化合物で、アニオンをTeからSに変えた硫化物における共同研究にも貢献して、すず硫化物スピネル系において、クロムすず硫化物スピネル系がバンド構造により最高の熱電性能を発現することを明らかにすることにも貢献した(J. Mater. Chem. Cに出版されback coverにもフィーチャーされた)。また、こうした論文発表のほか、国際会議における発表賞も受賞した。
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