研究課題/領域番号 |
19F19750
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐川 宏行 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (80178590)
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研究分担者 |
FEDYNITCH ANATOLI 東京大学, 宇宙線研究所, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2019-10-11 – 2022-03-31
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キーワード | Astroparticle physics / Cosmic rays / Atmospheric neutrinos / Astrophysical neutrinos / Nuclear physics / Radiation modeling / Open-source software |
研究実績の概要 |
Fedynitch氏は2019年9月に宇宙線研究所(ICRR)での研究を始めました。Fedynitch氏は、ICRRで主導しているテレスコープアレイ(TA)実験を主軸に、開発した大気ニュートリノのコードによるニュートリノ実験の解析、さらにマルチメッセンジャー天体物理学の研究を行う予定です。初めは、これまでの研究の継続と今後の課題の取り組み方の整理を行い、TA実験に具体的にどのような貢献ができるかに関して、文献の初期調査や議論を行いました。外部の協力者で統計学に精通しているCapel氏と最新のBayesian統計学を用いた超高エネルギー宇宙線の到来方向の解析に関して議論を行いました。これをもとに、平昌(韓国)で開かれたTA collaboratio meetingにおいてTAのデータ解析に関する提案をしました。 またFedynitch氏はマインツ(ドイツ)、上海(中国)、ロンドン(イギリス)、クイニョン(ベトナム)の国際ワークショップで招待講演を行いました。上海のワークショップではFedynitch氏が共催しました。 2019年度にはCapel氏が1週間、さらにドイツのTUMのHuber氏が2週間ICRRを訪問して共同研究を行いました。 2019年1月から2019年度末はコード開発と論文の執筆を行いました。2月には、超高エネルギー宇宙線と核物理の連携研究であるPANDORAプロジェクトに関して、民井教授(大阪大学)および木戸博士(理研)との新しい共同研究を始めました。 このプロジェクトでは、github.comでオープンソースとして利用できるいくつかの特殊な計算コード(x4i3、PriNCe[超高エネルギー宇宙線の輸送問題を解明するための新しいコード]、およびそのサポートツール)を作成しました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Fedynitch氏はICRRにおいて研究者との交流および外部から招待した研究者との共同研究を行うことができました。また12月には高性能ワークステーションのパーツを取得し、開発用コンピュータとして構築し、正常に動作しています。 Fedynitch氏にとって、ICRRでは管理スタッフ、良好な作業条件、オフィススペース、インターネット、住居などがたいへん効率的に提供されています。これらは研究を論文にまとめたり、コード開発の作業を生産的に行うために期待したとおりの条件でした。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度には、Fedynitch氏による共同研究と進行中のプロジェクトがさらに進むことが期待され、2019年度に部分的に開発されたシミュレーションを用いて、いくつかのプロジェクトを実施します。これらは、宇宙線と生命の起源、宇宙線と標準モデルを超える物理学、次世代の空気シャワーシミュレーションCORSIKA8の開発、地下暗黒物質実験のための高精度のミューオンと中性子バックグランドの計算、超高エネルギー宇宙線と核物理の連携研究であるPANDORA(Photon-Absorption of Nuclei and Decay Observation for Reaction in Astrophysics)プロジェクトへの寄与、銀河合併率へのニュートリノ質量の影響などの学際的な研究を含みます。またゲスト学生を受け入れて、共同研究によって、次世代のハドロン相互作用コードの基礎を構築する予定です。以上の共同研究で得られた結果をまとめて国際学会で発表を行います。新型コロナウィルスの影響で当初の渡航計画の変更がありますが、研究の進展にはあまり影響しないことを期待しています。
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