研究課題/領域番号 |
19F19752
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
天野 浩 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 教授 (60202694)
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研究分担者 |
SCHIMMEL SASKIA 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2019-07-24 – 2021-03-31
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キーワード | GaN / アンモノサーマル / バルク成長 / 結晶成長シミュレーション |
研究実績の概要 |
GaNは次世代省エネルギー社会システム構築のカギである。現在、ハロゲン気相成長法(HVPE)を用いて成長した自立基板が市販されている。HVPEは成長速度が速いため低コスト成長法の候補であるが、単位時間当たりの生産性を考えると、現状では多数枚成長にならざるを得ず、巨大な成長装置が必須になる。Siのチョクラルスキーのように長尺化すれば、スライスにより一回の成長で多数枚得ることができ、低コスト化できる。その際重要になるのは種結晶である。我々のこれまでの検討で、市販のHVPEによる自立GaN基板では結晶欠陥、反りが大きすぎて種結晶として利用できないことが分かっている。低欠陥密度、低反りの点で最も有望なのはアンモノサーマル法によるGaN結晶である。アンモノサーマル法では、鉱化剤としてアルカリ性と酸性の物質を使う場合がある。アルカリ性の場合、容器であるオートクレーブと強く反応して重金属が溶け出し、高純度の結晶を作製するのは困難である。一方酸性の場合はオートクレーブとの反応も穏やかで、より高純度な結晶が実現できる。 Saskia Carola SCHIMMEL氏は、現在、当研究室にある酸性鉱化剤によるアンモノサーマル装置でGaN結晶の成長に取り組んでいる。同氏は従来の白金に加え、金を用いたオートクレーブによりバルク成長を行っている。アンモノサーマル法の最大の課題は成長速度が遅いことである。同氏は成長装置の温度分布流体シミュレーションを活用し、炉壁への多結晶析出の抑制に取り組んだ。まず、空気のまま実験を行いシミュレーションの精度が十分であること確認の後、超臨界アンモニアでシミュレーションを行った。その結果、伝熱機構のほとんどが熱対流によるものであり、上部と下部の温度分布を最適化すれば、炉壁への多結晶析出抑制が可能であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Saskia Carola SCHIMMEL氏は、GaN結晶中への酸素混入低減のための自らのアイディアを実践するため、硬化剤チャージのためのグローブボックスを設計した。現在実験再開を待っている。 アンモノサーマル法は、1回の成長に1週間ほど必要で、また高圧での成長のため、装置のリークに対しては地道な対応が必要である。白金オートクレーブによる成長実験はようやく1回の成長が確認できた段階である。現在本番の金のオートクレーブによる成長実験の準備が始まったところである。その結果が出てまとめるのにまだ相当の時間が必要である。 また同氏は機械学習を用いた結晶成長条件最適化を進めている。現在、従来の決定方法の問題点等が明らかになりつつあるが、更なるデータ収集が必要である。 ある。その結果が出てまとめるのにまだ相当の時間が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、様々な予想できなかった課題の発生で成長実験が止まっている。まず白金ライナーの故障が発生し、時間のかかる修理を行っている。また、新型コロナウィルスの影響による成長実験が止まっている。そのため、現在は主に成長炉内の温度分布の流体シミュレーションを行っている。その結果、従来の方法では複数の温度ピークが存在し、成長速度が小さくなることが確かめられるなど、新たな知見も得られた。今後、遅れを取り戻すために本番の金のオートクレーブによる成長実験を行うとともに、炉の温度分布の改善のために装置の改造を行う予定である。
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