2021年度は沖縄トラフ火山岩類について、フーリエ変換赤外分光光度計を用いた火山ガラスと斑晶鉱物に含まれるガラス包有物の揮発性成分分析を行った。本分析は海洋研究開発機構(JAMSTEC)のMcIntosh博士との共同研究としてJAMSTEC設置の装置を用いて実施した。 また沖縄トラフ流紋岩の一部試料に、地殻物質が部分溶融して形成されたメルトが共存している組織が見つかり、これらの試料については地殻物質の形成時期を制約するために、レーザーアブレーションICP質量分析計を用いて、ジルコンU-Pb年代測定を行った。その結果、流紋岩質マグマの起源物質として、中生代の花崗岩質大陸地殻が寄与していることが、ジルコンU-Pb年代測定から初めて明らかとなった。これは昨年度実施した表面電離型質量分析装置を用いたRb-Sr・Nd-Sm同位体組成分析から得られたマグマ起源物質の制約とも整合的な結果である。 これらの成果については、昨年度までの成果と併せて国際学会にて3件発表を行い、現在論文投稿準備を進めている。本研究で得られた成果は琉球弧・沖縄トラフのマグマ形成史、火山活動史を理解する上で、今後極めて重要な基礎データとなるものである。研究分担者(Murch博士)の滞在期間中、新型コロナウィルス感染拡大によって計画していた野外調査の大部分は実施することができなかった。本年度実施予定であった沖縄トラフでの調査航海も前々航において船内感染者が出たため、航海が中止となってしまった。しかしその反面、収蔵岩石標本の系統的かつ膨大な地球化学・岩石学的データを取得して、大きな成果を挙げることができた。
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