生活習慣病などの予防を目的として,食品の健康機能に関わる付加価値の創造が必要とされている.本研究では,デンプンとともに抗酸化性成分などの健康機能に関わる多糖類を多く含有するヤマノイモ科などTuber系塊根類に焦点を当て,その加工方法や程度が糖質消化性および消化中の抗酸化性変化に及ぼす影響の解明を目的とした. ヤマノイモ(Dioscorea japonica)は,抗酸化作用,抗高血圧作用などの健康維持効果を有する.日本ではすり下ろした生の状態で食べる以外にも,茹で,蒸し,揚げなどの加熱調理された状態で食されることも多い.ただし加熱調理により理化学特性が変化するため,付随して抗酸化性や糖質消化性などの健康機能性も変化すると考えられる.ヤマノイモ塊茎の主な成分はデンプン(75-84%)とタンパク質(6-8%)である.デンプンは摂食後の消化作用でブドウ糖に分解されて血液中に移行し,血糖値の上昇要因となる.タンパク質は主に粘りに関与し,ヤマノイモの機能性に関わる因子となっている.それらの主要な栄養素とは別にポリフェノールなどの機能性成分も多く含まれ,抗酸化活性に寄与している.これらヤマノイモの特性は,加熱加工によって変化すると考えられるが,その前提となる生の状態での特性評価も重要となる.そこで生のヤマノイモの特性を2つの品種(Nagaimoナガイモ,Nebari Starネバリスター)で比較した.その結果,品種によって異なる抗酸化性や糖質消化性を有することが明らかとなった.したがって最適な健康機能性を確保するためには,同じヤマノイモ科であっても品種に応じた加工,調理条件の適用が必要である.
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