研究課題
褐藻類,特にアミジグサ目,シオミドロ目,ヒバマタ目,ツルモ目,ファエオシフォニエラ目,コンブ目の高次の系統関係を,すでに公表されているゲノム情報と,これまでに解析されていないが,鍵となる分類群の一般的に用いられている核,葉緑体およびミトコンドリア遺伝子の塩基配列情報に基づき解明する。これらの系統樹の情報と,代表的な海藻類の種の地理的分布をOBIS, AlgaeBaseなどのデータベースに基づき整理し,世界各地における各系統群の種多様性の豊かさを解析し,Keith et al. (2014)に従い,その豊かさを規定する環境要因を推定する。さらに,分子時計と関連する化石情報から,各系統の分岐年代の推定を行い,その多様化のパターンを議論する。淡路島において,アミジグサ目の種の採集を行った。褐藻類の系統と進化に関する総説を共同執筆し,出版した。フランス領ポリネシア,ヨーロッパ,西インド太平洋海域の海藻類の種多様性,系統と分類に関する論文を共同執筆し,投稿した。日本藻類学会において紅藻ベニマダラ目の多様性と生物地理に関する学会発表を行った。褐藻類の全ゲノム情報に基づき,核コードの30遺伝子に基づく分子系統解析を行い,オルガネラ遺伝子に基づく分子系統との比較についての論文作成,投稿準備を行った。褐藻,ファエオシフォニエラ目のPhaeosiphoniella cryophylaを培養し,培養藻体からDNA抽出を行い,ドラフトゲノム解析を行い,これに基づき分子系統解析を行った。
2: おおむね順調に進展している
新型コロナウィルス拡大防止措置のため,国内外の野外調査がほとんど行えなかった。しかし,これまでに取得していた試料を対象にした遺伝子解析と,国際共同研究に基づく塩基配列情報の解析から,褐藻類の分子系統や生物地理に関する研究を進め,4報の学術論文を共同執筆するなど一定の成果があげられた。
前年度に引き続き,海藻類のゲノム情報に基づく系統樹についての論文作成を進め,投稿する。また,褐藻コンブ目,ツルモ目とファエオシフォニエラ目の系統関係を明らかにするため,ツルモ目の種のドラフトゲノムを取得し,より詳細な分子系統解析を行う。また,新型コロナウィルス拡大防止措置が緩和され,国内外の野外調査が可能になれば,米国ハワイ州およびカリフォルニア州での採集を行い,Lobophora属,Taonia属などのアミジグサ目の種を対象に,解析を進める。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Biodiversity and Conservation
巻: 30 ページ: 1501~1546
10.1007/s10531-021-02156-0
J. Biogeography
巻: nil ページ: nil
10.1111/jbi.14047
Phycologia
10.1111/pre.12456
South African J. Botany
Critical Reviews in Plant Sciences
10.1080/07352689.2020.1787679