1. 研究目的 : 次期高等学校学習指導要領でも強調されているように探究活動への関心や効果への期待が高まっているが、探究学習を導入・実施するにあたって、それが学習者のどの能力にどのような影響を与えるのかということについてはこれまで科学的に明らかにされていない。本研究の目的は、学習者のグローバル体験学習と探究学習が学習者のグローバル意識・能力の変容と、教科学力にどのような影響を及ぼすのかを検討することである。 2. 分析方法 : 関西圏のSGH指定校の学習者の以下のデータを分析。 ①学習者のグローバル意識(5観点24項目の「重要度」・「達成度」5段階評価の3年間の推移) ②プログラムの活動負荷を基に算定したグローバル体験(国内・海外)参加度 ③学習者が執筆した卒業論文評価値を基に算定した探究学習の参加度 ④態度・意欲を含めた広義の学力を示す評定、狭義の学力(知識・能力)を測る模試成績、英語技能試験の得点 3. 研究成果 (1)学習者のグローバル意識・能力については、プレゼン力や論理的思考力、多面的思考力といった「基盤能力」と課題解決力、課題発見力、探究力等、「課題対応力」に特に伸びが確認された。 (2)国内体験学習と理科、英語の評定と模試成績の間に弱い相関がみられ、海外体験学習は英語と5教科総合の評定平均値と英語の模試、英語技能テストの間に弱い相関がみられた。グローバル体験学習は(国内・海外合計)は、国語と数学の模試成績を除く全ての教科の評定と模試成績および英語技能テストの得点と弱い相関があった。 (3)「探究学習(論文評価値)と教科学力」にはより強い相関がみられた。探究学習における論文執筆能力は、文系・理系を問わず高等学校で教育する多様な学力と相関することが示された。 以上のことから、グローバル体験学習や探究学習は、学習者のグローバル意識の向上だけでなく教科学力の涵養にも一定の効果を持つ可能性が示唆された。
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