本研究は、高等学校でのグローバル教育プログラム(事前学習、海外体験学習、事後学習の内容を含む)を生徒がどのように受け止め、その後の進路や職業選択に意味づけを与えているのか、グローバル・シティズンシップ育成の観点から明らかにすることを目的とした。 具体的には、慶應義塾高等学校で2010年度から4年間実施した「高大連携による国際協力プログラム―カンボジアでの体験学習を中心に―」を事例とし、生徒のプログラム受容と、中等教育での海外体験学習を中心とした包括的なグローバル教育プログラムの在り方を検討した。 研究の方法は、事前学習の資料(プロジェクト学習、プレゼンテーション、講演会の感想など)と海外体験学習後の生徒のふりかえりの記述の検討と、卒業生のライフストーリーインタビューを採用し、卒業生が獲得したグローバル・シティズンシップはどのようなものであり、日常生活やその後の活動の中にどのように位置づけているのか考察した。 研究の成果として、生徒は異文化理解、グローバル経済への参加、社会的な活動への参加といったグローバル・シティズンシップの様々な視点を、個々のこれまでの経験や自らの日常生活の文脈に合わせて獲得し、卒業後の留学や海外インターンシップ、職業選択につなげていることが明らかになった。また先行研究においては、中等教育でのグローバル教育は、カリキュラムや試験の制約により人権や平和といったテーマにじっくり取り組むことが困難であるという指摘があったが、本研究では試験・受験の時期への配慮や、継続性のある課外授業として設定することにより、生徒に気持ちの余裕が生まれ、実現しやすくなることが示唆された。加えて、アクティブ・ラーニングと知識の修得の双方を備えた事前学習は、海外での体験学習を深めるのに有意義であることも明らかになった。
|