近年、個人の所有するスマートフォンを業務や授業等で活用するBYOD(Bring Your Own Device)が報告されている。本研究では、スマートフォン利用が学習者に与える影響について検証することを目的に、理科の授業において、質問紙法及び観察法による調査を行った。主な結果を以下に示す。 ・高校生を対象に、Web情報探索による個別学習後の学習者の考えと学年を超えた意見共有後の学習者の考えの比較分析を行った結果、個別学習後と意見共有後で共通した考えと、異なる考えが確認された。 ・高校生を対象にゲーム型授業応答システムの難易度をある程度高めることで、学習前より学習後において有意に正答数が高くなり、解答時間が短縮されることが確認された。さらに、生物基礎の授業において教員より生徒が出題したクイズにポジティブな感情が生じやすいことが分かった。 ・高校生を対象にコメント送信機能を活用した授業実践を行ったところ、コメント送信機能を活用しなかったグループと比較して、コメント送信機能を活用したグループは有意に「眠気が覚めた」と感じることが認められた。コメントの内容を分類した結果や、短時間で多数のコメントが送信されていたことから、効果的に主体的・対話的な学びが実現できた。 ・大学生を対象に実験を行ったところ、自由記述の語とグループによる対応分析の結果から、生き物の飼育経験が無いグループが「現在」、飼育経験が有るグループが「未来」の生き物を対象にして考える傾向がみられた。また、スマートフォンを使用したグループが「直接的」、使用しなかったグループが「間接的」に生態系を保全しようとする傾向がみられた。 スマートフォンの効果的な活用により、主体的な学びの実現等における教育的な知見が得られた。一方、スマートフォンの使用有無により、学習者の考えに差異がみられたことから、対話的な学びの重要性が示唆された。
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