本研究では、公職選挙法の改正により、選挙権年齢が18歳からになったことや若者の選挙離れの社会問題をうけ、聴覚に障がいがある高校生や中学生に社会科・公民の政治的分野についての知識と理解を深め、社会参加の充実を図るために、手話表現データを作成し、web上などで広く公開することを目的とした。また、このwebデータは、聴覚特別支援学校の社会科の教員の授業の補助としても活用でき、さらには、生徒や学生にとっても授業の復習や自主学習などができるような教材としての検索型手話動画として活用することも目的としている。 まず、中学校・高等学校の複数の教科書から共通に記載されている社会科・公民分野や現代社会・政治分野の重要用語を抽出した。抽出した用語の検討後、それらの用語に関する理解度のアンケートを作成し、倫理審査、生徒への調査の説明等を行った上で、複数校の聴覚特別支援学校高等部で実施した。 次に、得られたアンケート結果をもとに、特に理解度が低いとされた用語、例えば「連座制」などは意味を表す表現と用語に対応した表現、また議会関係の用語等では、教科書的表現と実際の議会や裁判で現役通訳の人たちが使用している表現というように複数の表現を作成するなどの工夫をした。 また、動画収録にあたっては、手話通訳士に表現してもらい、聴覚障害者で手話指導をしている方に評価をして頂いた。また、長年聴覚支援学校高等部で社会の授業をしている聾教師の方々や聴覚障害を兄弟に持つ弁護士の方に法律や実際の裁判での使用している表現についての助言を得て、検索型手話ビデオ動画を作成し、web公開した。さらに、手作り手話小冊子を作成した。 今後は、作成した手話動画や小冊子を基にして、広く聴覚特別支援学校の中学部や高等部の授業での活用してもらうと共に、ろう者協会などの成人の聴覚障害者の団体に活用を広げていく。さらに、使用者からフィードバックしてもらいながら、表現や説明の改良を加え、政治分野の動画資料の充実を図る。
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