研究成果の概要 |
天竜川下流域の湧水瀬に着目して, (1)河床変動履歴に基づく産卵床位置の探索と(2)環境DNAを用いた産卵床検出法の有効性の検討を行った. 2019年11月に6箇所の湧水瀬でアユ産卵床調査を実施し, 3箇所の湧水瀬でアユ産卵床を確認することができた. それぞれの地点では縦断的な産卵床調査を実施し, 瀬頭で卵数が多く, 瀬尻で減少する傾向が認められた. 各地点におけるアユ由来環境DNA濃度は地点間のばらつきが大きいものの, 概ね卵数と正の相関関係が確認された. 現地調査並びに環境DNA分析の結果から, 環境DNA分析によるアユ産卵床探索の有効性が示された.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究の成果より, アユ由来環境DNAをバイオマーカーとした新しいアユ産卵床探索法の可能性が示された. 従来までの産卵床探索法は, 河床の砂利を掬い上げ目視によって砂利に付着している卵塊を探す必要があり, 自然環境保全の観点からはあまり望ましい方法ではなかった. しかし, 環境DNAを活用することで河川表層水を採取するだけで, 対象とした水域における産卵床の有無が推定できるようになった. また, 本研究で対象とした湧水瀬は半閉鎖的水域であるため, 環境DNAの上流からの移入や流下に伴う減衰などの影響を排除でき環境DNAを利用したアユの産卵床調査の有効性を評価する事ができた.
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