研究実績の概要 |
液体中でプラズマを発生させる技術(液中プラズマ技術)を用いると, 高温高圧環境や触媒を使用せず, 単に放電するのみで液体を分解することができる. この分解は主に熱プロセスであり, 分解対象の選択性が広いというメリットがある. 液中プラズマ技術を用いることで廃油を分解し, 水素を製造することができる. 即ち廃棄物処理とクリーンエネルギー製造が同時に行える一石二鳥の手法である. しかし, 廃油の炭素成分が個体炭素として析出し, これが電極を覆って放電を阻害するせいで連続水素製造ができないという問題があった. 本研究ではこの問題を解決するために, プラズマ電極に超音波振動を与える手法を試みた. 分解対象は廃油の主成分であるn-ドデカンとした. 結果, 超音波を照射しても炭素を除去することができなかった. そこで次に反応場に水蒸気を投入し, 酸素と炭素を反応させることで炭素を除去する手法を試みた. プラズマ電極の上部に細い管を設置し, 管内に水を流した. この管はプラズマ周囲に発生する気泡に覆われることで周囲液体から断熱される. この状態でプラズマからの熱が伝わることで, 管内で高温水蒸気が生成される. この水蒸気を反応場に供給した. その結果, 電極に炭素が堆積することがなくなり, 連続製造を行うことができた. また, 水分解による水素生成および, n-ドデカンの水蒸気改質による水素生成が起こり, 水蒸気を投入しない場合に比べて水素製造量が30%向上した. 本研究の成果は再生可能エネルギーに関する国際学会(JCREN 2019)で発表された.
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