○研究目的 : 桜島の火山灰はその大部分が廃棄されるが、一方で産業利用が期待されている資源であり、その有効な活用手段を見いだすためには化学組成を明らかにする必要があった。火山灰の化学組成を分析する場合、電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)によるエネルギ分散型X線分析(EDX)で分析することが多いが、火山灰にはガラス片や鉱物片など、さまざまな種類の粒子が含まれるため、分析箇所により化学組成が不均質となる。これに対し、蛍光X線(XRF)分析は、特にガラスビード法による分析を行えば、試料を均質にすることで、分析誤差を減らすことができる。しかし、XRF分析が火山灰の化学組成分析に使用された例はこれまでほとんどなかった。本研究では、ガラスビード法によるXRF分析装置での定量分析(全岩化学組成分析)を行い、EPMA分析の結果と比較して、桜島火山灰に対するXRF分析の有効性を検討した。 ○研究方法 : 桜島火山灰の化学成分分析について、XRF分析とEPMAによる元素分析の比較を行った。XRF分析については、桜島火山灰に対して10倍希釈のガラスビードを作成した。XRF分析については、産業技術総合研究所の岩石標準試料を用い、検量線法による分析を行った。EPMAについては、均質性を図るため、採取した桜島火山灰を90分間メノウ乳棒で粉砕した。その後、EDX及び波長分散型X線分析(WDX)について点分析を100点行い、各成分の平均を取ることでXRF分析の比較を行った。 ○研究成果 : EPMA-EDXで分析した化学成分については、主要元素はXRF分析との比較ができたものの、微量元素は定量限界となる成分が多く、その比較はできなかった。XRF分析とEPMA-WDXでの比較については、SiO_2やAl_2O_3といった主要元素はわずか数%の誤差に対し、含有化学成分の少量のものほど、誤差が大きい傾向があることが確認された。また、誤差を検証するとEDXに対してWDXの方が、誤差が少ないことが確認された。本研究の成果については、大学教育における分析化学の充実や桜島火山灰の産業開発を行う際の有用な指標となると考えられる。また、XRF装置不慮のため、本研究ではガラスビードの希釈率を変えた分析は行っていないが、今後は低希釈率のガラスビードでのXRF分析も再検証していく予定である。
|