研究課題
近年の挙児希望年齢の高年齢化により、不妊女性の加齢に伴う卵巣機能低下が問題となっている。加齢変化の一つとしてAdvanced Glycation End Products(AGEs : 終末糖化産物)の生体内への蓄積が挙げられる。生体内のAGEs蓄積量は生活習慣の改善により改善可能な外因性AGEs量により規定されるため、卵巣に蓄積したAGEsの卵子の質への影響とその機序を明らかにすることは、女性のプレコンセプションケアを考えるうえで重要である。本研究において、体外受精治療時における採卵時に卵胞液(FF)、卵丘細胞(CCs)を個々の卵胞別に回収し、卵胞をその内包していた卵子から発生した胚の形態により2群に分けて解析した(形態不良胚 : group I, 良好胚 : group II)。遊離AGEsの指標であるAGE/sRAGE(soluble receptor for AGE)比はgroupIのFF中で有意に高かった。また同一患者の卵胞同士で比較した場合、group IのFFにおいてAGE/sRAGE比、炎症性サイトカインであるinterleukin(IL)-6, IL-8濃度がいずれも有意に高く、group IのCCにおいて、小胞体ストレス応答因子activating transcription factor(ATF)4, IL-6, IL-8mRNA発現量がいずれも有意に高かった。採卵時に得られた顆粒膜細胞(GCs)をAGEsにより刺激するとIL-6, IL-8の培養上清中への分泌が増加し、この効果はATF4をノックダウンした細胞において減弱した。卵胞におけるAGEsの蓄積により、卵胞局所環境においてER stressの活性化を介して炎症性サイトカインの産生が増加し、卵子の発生能低下と関連することが示された。ER stress、AGE-RAGE経路は卵子の発生能向上のための治療ターゲットとなる可能性が示唆された。
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