研究課題
【目的】Janus kinase/signal transducer and activator of transcription(JAK/STAT)経路は造血器疾患において重要な役割を果たしており、慢性骨髄性白血病(CML)においてはSTAT5の活性化がCML細胞の生存に必要不可欠であることや、STAT5の過剰発現がチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)抵抗性を示すこと等が報告されている。STAT5の遺伝子多型のうち病態との関連が深いSTAT5 rs6503691C>T等と治療効果、およびBCR-ABL TKIの血中濃度との関連を検討した。【方法】イマチニブ(IM)で分子遺伝学的効果(MMR)に到達するも分子遺伝学的完全寛解(DMR)未達の為ニロチニブ(NIL)に変更した試験63例、IMでDMR達成後NILにて2年間地固め療法を施行し治療薬を中止した試験78例を対象とした。各TKIの血中濃度はHPLCを用いて測定し、STAT5の遺伝子多型はPCR-RFLP法を用いて解析した。【結果】解析を行った141例中、12ヵ月および18ヵ月時点でのMMR達成は50例および74例であった。STAT5 rs6503691 C/C多型は58例、C/TおよびT/T多型は83例であり、これらの多型間でのMMR到達率を検討したが、12ヵ月および18ヵ月時点いずれにおいても有意な差は認められなかった(P=0.219およびP=0.118)。12ヵ月時点でMMRを達成した50例のNIL血中トラフ濃度を測定したところ、その中央値は、STAT5 rs6503691 C/C多型(24例)で1120.9 ng/mL、STAT5 rs6503691 C/TおよびT/T多型(26例)で1259.7 ng/mLであり、有意な差は認められなかった(P=0.573)。今後は評価対象とする治療期間を拡大し検討を進める。
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