デノスマブはRANKLを標的とした抗体医薬であり、がん骨転移等による骨病変の治療に有用である一方、重篤な有害事象として死亡例を含む低カルシウム(Ca)血症が報告されている。治験では血清Caの低下はデノスマブ曝露量依存的であることが示唆されているものの、これまでにデノスマブ血清中濃度と低Ca血症の関係について実臨床で検討した報告はない。申請者はこれまでに、LC-MS/MSを用いたデノスマブのヒト血清中濃度測定法を開発し、デノスマブの薬物動態には個人差が大きいことを報告しているが、その個人差要因については明らかではなかった。他の抗体医薬では標的分子の存在量が薬物動態に影響することが知られていることから、デノスマブにおいても同様のメカニズムがあるのではないかと仮説を立てて検討した。 1. デノスマブの薬物動態に与えるRANKLおよびOsteoprotegerin(OPG)の影響 RANKLおよびその内在性デコイ受容体OPGの血清中濃度をそれぞれELISAで測定し、デノスマブの血清中濃度と比較した。RANKL、OPGともに大きな個人間差があり、とくにRANKLは測定した検体の約半数で検出限界以下であった。これらとデノスマブの血清中濃度に相関は見られなかった。今回測定したRANKLの濃度は、デノスマブと結合していない遊離型のみを反映していると思われるため、今後は総RANKL濃度を測定することを検討している。 2. デノスマブの血清中濃度と有害事象との関係 デノスマブの有害事象として顎骨壊死や低カルシウム血症が知られるが、これらとデノスマブ血清中濃度との相関は認められなかった。顎骨壊死は頻度が低い有害事象であるため、症例数を増やすことで関連が見いだせる可能性がある。また、今回検討した全症例でカルシウム製剤の内服が適切に行われていたため、低カルシウム血症の発症が抑制されていたと考えられる。
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