研究課題
脳腫瘍摘出術では術中に患者を覚醒させ、脳機能評価を行いながら手術を進める覚醒下手術が実施されているが、術中の覚醒不良のため適切な評価が行えなかったり、心身への影響が懸念されたりする事例が課題となっている。覚醒下手術で使用される麻酔薬プロポフォールの投与量は、体重を変動因子とする薬物動態パラメーターを組み込んだ解析プログラムである薬物血中濃度予測Target controlled infusion(TCI)を基に調整する。また、脳腫瘍患者ではてんかん発作のリスクが非常に高く、抗てんかん薬が投与される。プロポフォール単独での薬物動態や覚醒度に関する報告は多々あるものの、抗てんかん薬併用による影響は明らかでない。申請者による先行研究では、脳腫瘍に対し覚醒下手術を実施した患者のうち、適切な麻酔薬管理がされたにも関わらず覚醒不良がみられることを示した。一部患者では、早期覚醒やプロポフォール予測血中濃度と実測値に3倍以上の乖離がみられた。また、薬物相互作用や抗てんかん薬による中枢神経抑制作用による、麻酔薬の効果減弱や増強の可能性が考えられた。以上より本研究では、抗てんかん薬のプロポフォール薬物動態及び覚醒度への影響を明らかにすること目的とした。2019年度には、覚醒下手術時において使用される薬物およびその投与方法に関して全国的な実態調査を行い、本研究に関する論点を明らかにした。また、血液中および脳組織中においても麻酔薬および種々抗てんかん薬濃度が感度良く定量できることを示し、計画通りに前向きの観察研究を実施した。
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Acta Anaesthesiol Scand
10.1111/aas.13554