研究課題
哺乳類は卵巣から排卵された成熟卵子が卵管内で受精し、細胞分裂を繰り返しながら子宮まで移動後、妊娠する。この間、母体は初期胚の存在を着床前に感知し、胚受容のために子宮内膜の構造を変化させる。従って、受精卵の移動に伴い、胚と母体の間で多様な情報交換が行われていることは想像に難くない。しかし、受精後~着床前にどのような分子が、特に卵管内からどのような経路で初期胚シグナルを母体に伝達するかについては殆ど明らかにされていない。本研究では、この初期胚シグナルの伝達経路を解明するため、ICRマウスを用いて受精卵(2-4細胞期)及び未受精卵の存在下における卵管総タンパク質のSWATH解析による定量的発現解析を行った。その結果、偽妊娠卵管に対する妊娠卵管において、それぞれ510/734種のタンパク質の増減が検出された。これらの中で特に発現量上昇が著しいのは金属イオン結合能を有するタンパク質であるMetallothionein(MT)-1、MT-2、MT-3、および卵子での発現が報告されているCD81であった。さらにこれら分子の遺伝子発現をReal-time PCRで確認したが、タンパク質レベルの解析と相反して各mRNAの発現量に大きな変化は認められなかった。ウエスタンブロット法ではMTに対する複数の市販の抗体では反応性が悪く良好な実験結果が得られず、またCD81は大きな発現変化は認められなかった。今後はMTを含めた受精シグナル候補分子の合成ペプチド等を用いて抗体を作成し、組織化学解析を最終目的とした詳細な定量解析を行う予定である。
すべて 2019
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J Histochem Cytochem.
巻: 67 号: 11 ページ: 813-824
10.1369/0022155419871027