研究実績の概要 |
[目的] 公立学校教職員の精神疾患による病気休職者の割合は、10年間で約2倍に増加している。この傾向は、業務が高度化・煩雑化している大学事務職員においても無縁ではなく、メンタルヘルスおよびワークモチベーション(以下 : WM)の低下を防ぐ対策が急務である。申請者はこれまで、「大学事務職員独自のWM尺度」を作成し、職場のメンタルヘルスとWMの関係性、そして運動介入により、メンタルヘルスとWMが向上する可能性を明らかにしてきた。本研究では、就業中の休憩時間に、より簡単に実施できる午睡(閉眼)に着目し、午睡介入と運動介入が大学事務女性職員のメンタルヘルスとWMに及ぼす影響を比較・検討することを目的とした。 [研究方法] 大学事務女性職員14名を対象とし、午睡介入と運動介入を無作為に分け、クロスオーバー法にて実施した。午睡介入は、3ヵ月間に週3回、就業中の休憩時間に15分間椅子に座った状態で、机を用いて、うつ伏せ状態にて実施した。また、運動介入は、3ヶ月間に週2回、1回あたり速歩30分間の運動を退勤後に実施した。介入前後に、【大学事務職員独自のWM尺度 : 6因子23項目(村上ら, 2016)】、【職場のメンタルヘルス測定尺度(松永ら, 2009)】、【3次元型睡眠尺度-日勤者版-(松本ら, 2014)】を用いたアンケート調査を行った。 [研究結果] 大学事務女性職員に3ヶ月間の午睡介入を行った結果、メンタルヘルス項目の「勤労意欲の減退」、「疲労・消耗感」、「社会関係の回避」が改善し、WM尺度の職務満足感が向上した。また、運動介入では、メンタルヘルス項目の「やりがい・達成感」、「疲労・消耗感」、「社会関係の回避」が改善し、WM尺度の他者からの評価と職務満足感が向上した。これらの結果から、就業中の休憩時間を利用した午睡介入は、運動介入と同様に職場におけるメンタルヘルスが改善され、大学事務職員のWMが向上する可能性が示唆された。
|