研究実績の概要 |
研究背景及び目的 小児慢性疾患により生じた運動機能障害は永続的であり, 上位中枢神経障害による痙縮や筋力低下に伴い歩行障害などを呈する。装着型動作支援ロボットであるロボットスーツHAL(以下HAL, CYBERDYNE社製)は, 装着者の意図に合わせて随意運動を支援する機構を有する。本研究は, 運動機能障害を有する幼児期の小児慢性疾患患者を対象としてHALを用いたロボティクストレーニングを施行し, 歩行能力, 運動機能, 日常生活活動における介入効果について検討した。 研究方法 本研究では, 新に開発された小児用のHALを用いた。第一研究は33名を対象とした。HALを用いたロボティクストレーニングは, 症例の重症度により座位での下肢屈伸運動、立位でのスクワット, 歩行から選択し, 1回の上限を20分, 各症例1回実施した。トレーニング施行前後の歩行速度, 歩幅, 歩行率, 表面筋電図を計測した。第二研究は10名を対象に計12回の継続的なトレーニングを実施した。第一研究の評価項目に加え, 歩行持久性, 下肢筋力, 粗大運動能力, 日常生活活動, 主観的評価についてトレーニング施行前後で比較した。 研究成果 第一研究では, 介入中に重大な有害事象は認めず, 幼児期の小児患者におけるHALを用いたロボティクストレーニングの安全性が確認された。また, 介入前後で歩行速度や歩幅といった歩行機能に即時的な改善を認めた。第二研究では, 歩行機能のみならず, 歩行持久性, 運動機能, 主観的評価においても改善が認められた。 本研究より, 小児用のHALを用いたロボティクストレーニングは幼児期の小児慢性疾患においても安全に提供可能であった。施行前後の歩行機能や歩行持久性, 粗大運動能力は施行前と比較し改善した。 以上より, 発達段階における運動機能障害により生理的運動パターンを習得していない幼児期の小児におけるロボティクストレーニングの有効性が示唆された。
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