研究課題
がん悪液質おける心筋障害では、酸化ストレスの蓄積による心筋萎縮などの関与が注目されている。心筋は定常状態ではATPの90%を酸化的リン酸化により産生し、その2/3に長鎖脂肪酸が利用される。中鎖脂肪酸(MCFA)は、カルチニン・シャトルを経由せずミトコンドリアで代謝され悪液質における栄養介入で重視されるが、心筋障害での検討は見当たらない。そこで、われわれはがん悪液質における心筋障害に対するMCFAの影響を検討した。H9c2ラット心筋細胞株をマウス悪液質モデルから採取した腹水で処理し、がん悪液質心筋障害モデルを作成した。これに対し、対象群、MCFA群、悪液質群および悪液質MCFA群の4群にフラックス解析および活性酸素種(ROS)測定を行った。悪液質群では呼吸商の抑制とATP産生減少、ROS増加が見られ、がん性心筋障害が確認された。MCFA単独では対象群と比較して呼吸商は促進され、ATP産生は増加した。一方、悪液質MCFA群では、悪液質群に比較し呼吸商の減少とROSの産生は抑制されていた。以上のように、MCFAが心筋ミトコンドリアを保護しがん悪液質おける心筋障害を改善する可能性が示唆された。
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