研究課題/領域番号 |
19H00526
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
池田 証壽 北海道大学, 文学研究院, 特任教授 (20176093)
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研究分担者 |
大槻 信 京都大学, 文学研究科, 教授 (60291994)
永崎 研宣 一般財団法人人文情報学研究所, 人文情報学研究部門, 主席研究員 (30343429)
鈴木 慎吾 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 講師 (20513360)
斎木 正直 北海道大学, 文学研究院, 専門研究員 (30609037)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 類聚名義抄 / 篆隷万象名義 / 新撰字鏡 / 玉篇 / 切韻 / オープンデータ / Unicode / GlyphWiki |
研究実績の概要 |
本研究は観智院本『類聚名義抄』の全文翻刻と注釈を作成して、その内容をインターネット上に公開し、自在に検索できるようにすることを目標として研究を進めた。データベース構築では、昨年度に続き、(1)異体字表示システム開発、(2)利用者の利便性向上、(3)本文校正の精度向上の三つの課題を実施したが、特に(1)に重点をおいて作業を進めた。具体的には、GlyphWikiというシステムを利用し、観智院本『類聚名義抄』の掲出字約42,000字を対象にして、原文字形に近い異体字フォントの作成を行って、約20,000字の作字を完成した。これにより研究期間中にすべての掲出字を原文字形に近い異体字フォントで表示することに見通しをつけた。この異体字フォント作成システムの開発に際して、(2)利用者の利便性向上と(3)本文校正の精度向上を同時に進めることができた。 次に注釈作成でも、前年度に続き、(4)高精細カラー版の利用、(5)逸文の収集と整理、(6)観智院本を取り上げた論著の収集と整理を実施した。(4)では正宗敦夫編による観智院本の和訓索引で疑問とされている箇所を重点的に検討し、望月郁子編『類聚名義抄:四種声点付和訓集成』と草川昇編『五本対照類聚名義抄和訓集成』の判読結果も参照して本文解読の精度を高めた。(5)は築島裕「改編本系類聚名義抄逸文小見」(『鎌倉時代語研究』11、1988)の全データを入力し、他の逸文収集の成果を整理した。(6)は『文選』古訓と『萬葉集』注釈書の引用を整理し約700項目を入力して、基本方針を固めることができた。 研究成果の公表に関しては、ホームページ(https://hdic.jp)を通したデータ公開を実施。成果発表では、人文科学とコンピュータシンポジウム、Digital Humanities2020等で成果を報告した。また研究集会を9月に開催して研究の進捗を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の中心資料である観智院本『類聚名義抄』のテキストデータと掲出字画像データは、そのすべてを公開するシステムが完成し、異体字についてもGlyphWikiを利用して、掲出字約42,000字のうち約半分の20,000字の作字を完了した。また注釈作成の過程で観智院本『類聚名義抄』の注文を字体注、音注、漢文意義注、和訓、その他に分類して、全部で約87,000の注文からなること、その内訳は字体注15%、音注28%、漢文意義注15%、和訓41%、その他1%からなることを解明した。これは大きな成果であると言える。また概算であるが、約5,000箇所について本文解読注を付すことができた。 訓点語学会の古辞書講習会で研究代表者の池田と分担者の大槻が講師をつとめ、辞書利用の経験の少ない学生と研究者に対して基礎的な研究資料と方法の提供を行った。 以上から着実に研究を進めていると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
データベース構築に関しては、当初、異体字フォントの作成はUnicodeに登録されていない漢字を約10,000字と見積もっていたが、システム上での実装および利用の観点から、全体を統一的なフォントで表示することに方針を転換した。この作業は、順調に進み、約42,000字中約20,000字の作字が完了した。これを点検するとともに残りの作字作業を進める計画である。注釈作成に関しては、観智院本『類聚名義抄』の逸文と諸注釈書への例証の収集整理をさらに進め、データベースへの取り込みと整備を行う。国内外の学会発表では、訓点語学会、人文科学とコンピュータシンポジウム、世界漢字学会、EAJSなどを予定している。古辞書利用の経験の少ない学生と研究者に対して基礎的な研究資料と方法の提供を行うセミナー(講習会)を実施する。
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