研究課題/領域番号 |
19H00529
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中山 一麿 大阪大学, 文学研究科, 招へい研究員 (10420415)
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研究分担者 |
落合 博志 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (50224259)
伊藤 聡 茨城大学, 人文社会科学部, 教授 (90344829)
山崎 淳 武庫川女子大学短期大学部, 日本語文化学科, 教授 (20467517)
牧野 和夫 実践女子大学, 研究推進機構, 研究員 (70123081)
高橋 悠介 慶應義塾大学, 斯道文庫(三田), 准教授 (40551502)
須藤 茂樹 四国大学, 文学部, 教授 (20612047)
大田 壮一郎 立命館大学, 文学部, 准教授 (00613978)
森實 久美子 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 学芸部文化財課, 主任研究員 (70567031)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 寺院文献資料学 / 聖教 / 経蔵 / 覚城院 |
研究実績の概要 |
本研究は基盤研究(B)「再興・布教から霊場化へ―増吽関連の寺院経蔵調査を中心に―」(2015ー2019)[15H03181]を研究最終年度前倒し応募によって、継承・発展させたものである。 研究初年度は、4月27日に仏教文学会の例会において、本科研での研究内容を主題としたシンポジウム「蔵書解析としての聖教調査―覚城院と新安流を例として―」を開催した。またその翌日には、本科研独自の公開研究会(第3回 寺院資料調査 研究報告「寺院資料調査の実状 調査量<埋蔵量」)を開催した。両報告会によって、近世仏教文化史の中で重要な位置を占める新安流の広がりと実像に関する新知見を明らかにした。また、中四国地域の寺院資料調査に基づき文献・絵画の専門家らによる最新の報告も行った。 10月には、『寺院文献資料学の新展開』全12巻(監修中山一麿・臨川書店)の初刊となる第1巻「覚城院資料の調査と研究Ⅰ」(中山一麿編)を刊行した。本書は、ここ2年ほどの覚城院調査をもとに、各研究者の最新の論文(10本)と資料紹介(4本)で構成されており、覚城院に関する初の専論集である。 2月2日には、第4回 寺院資料調査 研究報告「修学・開帳・蔵書-近世を耕す」を開催した。寺院を中心に多方面での調査研究を行っている研究者4名による報告は、紹介される資料の価値は言うに及ばず、今後これらの資料に向き合う姿勢を問い直すものとして注目されるものであった。 3月には、『寺院文献資料学の新展開』第5巻「中四国諸寺院Ⅱ」(落合博志編、論文10本・資料紹介2本)を刊行した。編者落合は本書の総論で「本巻収録の諸稿を読んで、地方寺院所蔵資料の文化財としての力を改めて感ずる」と述べ、本書刊行の意義を端的に示している。 以上、本年度の主要な実績のみ、略述した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、予定していた学会・研究会および書籍出版をすべて行った。しかも、当初は300頁平均の刊行を目指していた『寺院文献資料学の新展開』は、1巻・5巻ともに400頁を超える分量となり、各執筆者の力作が集結したことは喜ばしい限りである。内容的にも予想を超える成果を生み出している。いくつかの事例を示せば、若手を中心に行った新安流の展開に関する研究では、中心的調査寺院である覚城院にとどまらず、多方面への関連寺院との繋がりが明らかになった。また個々の研究者の専門を生かした研究では、調査で発見された資料と既存の資料との融合的研究が行われ、地方寺院資料の重要性を確認し、その注目度を格段に上げることに繋げた。さらには隣接する研究を行っている研究者との研究交流を行う事により、多角的な問題意識の共有が進み、今後の研究協力に繋がっている。 本研究の基盤である、各寺院の調査においても、参加者の繋がりにより人員も増加しており、古典籍中心の文献調査のみならず、文書・絵画にまで調査範囲を拡大して行われる総合調査となっている。 また、院生を含めた若手研究者には、原本を使った調査・研究の実践の場を提供し、作業の分担と指導を兼ねた調査を行っており、若手の成果公表の場の設定にも尽力している。 加えて、研究者以外の研究協力もすすんでおり、専門業者による資料の修復、および撮影に関する取り決めなどの折衝を行い、一部の典籍に関しては、既に作業に入っている。 なお、3月以降は新型コロナウィルス蔓延による調査活動の自粛があったが、本年度の事業報告にはほぼ影響はない。
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今後の研究の推進方策 |
本研究にとってフィールドワークは極めて重要であるが、現状の社会情勢下では十分な現地調査活動を行うことは困難である。これは事前に想定できる事態では無く、さらに今後の見通しも不可能である故、当初予定を完遂する事に固執することはかえって事態を悪化させるものと判断する。 本研究は既に長年のデータ・画像の蓄積があり、これを整理・活用することで、研究の停滞を最小限に抑える事が可能である。また、新たなデータ収集の方法としては、本科研で開発中の多寺院間目録画像閲覧システムを活用した、在宅調書の作成などを推進していくことで対応したい。 上記の対策のもと、出版計画は可能な限り大幅な変更なく行っていく。既に本年度の第一冊目となる『寺院文献資料学の新展開』第9巻は、最終校正に入っており、7月には刊行予定となっている。さらに続巻についても、原稿の入稿が始まっている。 研究会の開催は、現状見合わせているが、社会情勢の好転を期して、準備は進めている。 今後も臨機応変に対策を練りながら、研究の優先順序の入れ替えや、方法の改良などによって、求める成果を残していく所存である。
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