研究課題/領域番号 |
19H00534
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
遠藤 秀紀 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (30249908)
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研究分担者 |
佐々木 剛 東京農業大学, 農学部, 教授 (00581844)
池谷 和信 国立民族学博物館, 人類文明誌研究部, 教授 (10211723)
本郷 一美 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 准教授 (20303919)
山田 英佑 山梨県立博物館, 山梨県立博物館, 学芸員 (30748968)
押田 龍夫 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (50374765)
恒川 直樹 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (50431838)
中井 信介 佐賀大学, 農学部, 准教授 (90507500)
米澤 隆弘 東京農業大学, 農学部, 准教授 (90508566)
園江 満 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (90646184)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 家畜化 / 動物遺残体 / 分子系統解析 / 機能形態 / 農村社会 / ヒューマンアニマルボンド / 民俗 / 人類誌 |
研究実績の概要 |
タイ、ラオス、ベトナム、中国、スリランカ、トルコ、マダガスカル等を想定した中規模な現地調査計画をもち、またハンガリー、イタリアなどの古典的家畜育種地域との比較を考えていたが、コロナ情勢により、調査計画は期待通りには進まなかった。そこで用意した手法のうち、文化人類学、農村社会学、人類生態学、人文地理学、現地での文化財科学に関わる部分を縮小、代わりに博物館に既存の貴重資料の解析や、日本国内の移動によって検討が進む在来家畜や、離島の農業誌に調査をシフトさせた。資料解析では、生物学的には分子遺伝学的検討や形態学的解析を重視した。 家禽・セキショクヤケイは、既存データを用いた形態解析に切り換え、生物学的には機能形態学を強力に進めた。ラオスのセキショクヤケイやタイの闘鶏を用いた新たな解析により、家禽全体の人為育種特性を明らかにすることができた。分子遺伝学はアジアの地鶏の系統関係の解析に取り組み、大きな解析成果を得つつある。一方、現地調査を望んでいた動物考古学は進捗しなかったが、出土標本を用いた微細形態学的解析による機能の理論化などが研究の中心となり、高度な成果を上げた。民俗学、生態人類学方面は、蓄積された標本資料による人と動物の関係に関する新たな体系づくりに取り組んだ。 国内では離島における家畜飼育誌の検討が進んだ。これは本来は途上国による人と家畜の間柄を直接調べる狙いがあったところを、主に近世以降に継続した国内の人と家畜の関係を調べたものである。理論化にはまだ時間を要するが、日本という島嶼の特異な事例を導入することで、新たな家畜論が展開できる可能性を得ている。 現実に変化する海外調査の可能性・比重に対して、柔軟な研究手法と研究主題の導入で対処し、渡航可能性の状況に応じた最大限の研究成果をあげることに心を配った。人と家畜の関係を語るうえで幅広い実績を得ることができたと総括できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、多数の国外拠点を運用しての規模の調査は実施困難であった。フィールド調査については、タイ、ラオス、ベトナム、インドネシア、中国、ミャンマー、バングラデシュ、スリランカ、トルコ、マダガスカルに関しての学際検証は、今後の課題として残された部分がある。 一方で、分子遺伝学、形態学、動物考古学、国内離島を用いた農村・畜産誌の研究は興味深い成果を得ているため、そうした新たな視点を今後の計画のまとめの段階に活用していくことが期待される状況である。 ヒューマンアニマルボンドの実態解析は、途上国調査が効果を上げるが、それが十二分に実行できなくても、人と家畜の関係を新たな理論として構築できることに自信を深めている。今後、どうしてもデータ量の少ないラオス、トルコ、マダガスカルのフィールド調査を実施し、研究課題の総合化に取り組むプランを準備している。比較総合により、本課題がより大きな家畜概念の構築に近づくことを狙うことのできる状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
2020年以降完全な実施が困難であったいくつかのフィールド調査計画を推進したいと考えている。一方で遺伝学をはじめ、形態学、動物考古学などの新知見による学融合の成果が目覚ましいので、引き続き、アジア圏を中心的視野に置きつつ、ヒューマンアニマルボンドによる家畜概念の刷新を進めたいと考えている。 また研究開始当初にはあまり意識をもっていなかった日本国内での解析・分析・比較・総合を実施することになり、人と家畜、人と風土、人と農村といった研究断面に、日本国内の離島や過疎地域が新たな比較総合の対象として視野に入ってきたと言える。引き続き、コロナ情勢の回復を見極めながら、家畜コンセプトの創造的構築を目指した学融合を臨機応変に進めていくことが重要であると考えられる。
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