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2021 年度 実績報告書

前近代ユーラシア世界における広域諸帝国の総合的研究:移動する軍事力と政治社会

研究課題

研究課題/領域番号 19H00535
研究機関東京大学

研究代表者

杉山 清彦  東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (80379213)

研究分担者 清水 和裕  九州大学, 人文科学研究院, 教授 (70274404)
真下 裕之  神戸大学, 人文学研究科, 教授 (70303899)
前田 弘毅  東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (90374701)
舩田 善之  広島大学, 人間社会科学研究科(文), 准教授 (50404041)
柳谷 あゆみ  公益財団法人東洋文庫, 研究部, 研究員 (90450220)
山下 将司  日本女子大学, 文学部, 教授 (50329025)
鈴木 宏節  神戸女子大学, 文学部, 准教授 (10609374)
伊藤 一馬  大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 招へい研究員 (90803164)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワード帝国 / 武人 / ユーラシア / 王権 / 宮廷 / 移動
研究実績の概要

本研究の第3年度に当る2021年度は、前年に中国から世界に拡散した新型コロナウイルス感染症の影響で研究計画の見直しを余儀なくされ、同年度計画を修正しながら実施するとともに、一部を2022年度に繰越して対処した。当初計画していた個別および共同の海外現地調査は見合せざるをえなかったが、前年以来のオンライン会議ツールを活用した研究会の実績をふまえて、機動的にオンライン研究会を実施するとともに、2022年度には公開連続ワークショップをオンライン形式で開催し、共同研究の実を挙げることができた。
本研究が対象とするのは、8-10世紀前後のアッバース・突厥・唐(第一期)、12-13世紀前後のザンギー朝・モンゴル・宋(第二期)、16-17世紀前後のサファヴィー・ムガル・大清(第三期)という、3つの時期と9つの国家群である。2021年度は個別研究報告よりも比較史的アプローチについての議論を重ね、それをふまえて、3回にわたる公開ワークショップ「武人たちのユーラシア──越境・征服・統合──」を、当初計画より1年遅らせて2022年度に実施した。第一期は「“テュルク/ソグド・インパクト”の東西」、第二期は「“武”の多様性──動乱と征服の時代」、第三期は「帝国を統べる武人たち」と題して研究代表者・分担者全員が報告し、日本古代対外関係史、インド中世史、ドイツ近世軍事史のコメンテーターをそれぞれの回に配して議論を交わした。このような学術企画は、多様な時代・地域にまたがって構成される本研究課題の組織ゆえに可能となるものであり、アジア史のみならず西洋史・日本史にわたる参加者から大きな反響を得た。
当初計画からは変更を迫られたが、このような企画・方法両面にわたる共同研究の実績は、本研究課題の大きな成果と評価できると考える。他方、計画の遷延・変更を余儀なくされたため、期間延長して研究のさらなる進展を期すこととした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

第3・4年度に当る2021・22年度は、所謂コロナ禍の影響で、第2年度に引き続いて当初の研究計画の見直しを余儀なくされた。このため、第2-4年度の活動の柱としていた(1)個別および共同の海外現地調査、(2)海外研究者を招聘した公開国際セミナー、(3)研究メンバーによる公開連続ワークショップ、(4)クローズドの定例研究会、(5)海外研究者を招聘した国際シンポジウムのうち、前二者は断念せざるをえなかった。しかし、(4)の研究会については、オンライン形式の利点を活かして開催頻度を上げることで高密度の共同研究を展開することができ、それを受けて(3)の公開ワークショップを成功裡に開催できた。すなわち、2021年度はオンライン研究会を8回にわたり実施し、また2022年度は5-7月に全3回の連続ワークショップを開催、10-12月にはワークショップ各回のコメンテーターを招いた研究会を開いて、コロナ禍下においても濃密な報告・討論を行なうことができた。
これらの活動を通して、広汎な時代と地域を対象にして立体的に実証・比較を行なうことを企図する本研究課題を、実証研究・比較研究双方の面で順調に進展させることができた。海外での個別の史料調査や共同での現地踏査が果せなかったことは遺憾であるが、本研究は長期間・大規模なフィールド調査を必須とするものではなく、既刊資料を基に個々に実証研究を実施しつつ、比較検討やそのフィードバックを行なうという形で進めているため、国内外移動の制約は根本的な障碍ではなく、総じていえば研究の進捗に大きな支障は生じなかった。その点では、研究内容としては「おおむね順調に進展している」と評価することができる。他方、成果の総合・発信の面では、活動の制約のために充分とはいえず、そこで、総括のシンポジウムを当初計画から遅れながらも実施するため、研究期間の延長で対応する。

今後の研究の推進方策

当初の予定では、2020-21年度に共同海外調査や公開国際セミナー、公開連続ワークショップを実施し、その成果をふまえて、総括として最終年度の2022年度に海外研究者を招聘した国際シンポジウムを開催する計画であった。しかし、これらの計画は、コロナ禍のために連続ワークショップを1年遷延してオンライン形式に変更のうえ実施したにとどまり、2022年度段階でもなお情勢の先行きが不透明であるため、国外から研究者を招聘しての対面シンポジウム開催も厳しいと言わざるをえなかった。そこで研究期間を2023年度に延長し、オンライン形式での連続ワークショップの成功をふまえて、同形式で国際シンポジウムを秋頃を目処に開催し、3期にわたるユーラシアの東西の諸帝国の軍事集団・武人エリートと王権・支配組織との関係について、これまでの成果を総括するとともに学界に向けて発信を図る。
あわせて、予定していた概説論集『ユーラシア諸帝国の武人たち(仮)』の編集・出版を進めるとともに、共同研究を通して明らかになったユーラシア諸帝国における武人たちの具体像や歴史事象の比較考察・モデル化を進め、論文集の編集を目指す。これらの活動を通して、〈軍事力〉の〈移動〉という観点の下、ユーラシア諸帝国の組織・制度と政治社会の両面について、横断的・動態的に比較・総合するという研究目的の達成を目指す。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 図書 (6件)

  • [雑誌論文] ディオゴ・デ・コウト『アジアのデカダ集』:解題と若干の翻訳2022

    • 著者名/発表者名
      真下裕之・岡美穂子・野澤丈二・中砂明徳
    • 雑誌名

      東京大学史料編纂所研究紀要

      巻: 32 ページ: 178-195

    • 査読あり
  • [雑誌論文] アブル・ファズル著『アーイーニ・アクバリー』訳注 (10)2022

    • 著者名/発表者名
      真下裕之(監修)、二宮文子・真下裕之・和田郁子(訳注)
    • 雑誌名

      紀要(神戸大学文学部)

      巻: 49 ページ: 57-98

    • DOI

      10.24546/81013086

  • [雑誌論文] 複合国家としての大清帝国──マンジュ(満洲)による集塊とその構造──2021

    • 著者名/発表者名
      杉山清彦
    • 雑誌名

      歴史学研究

      巻: 1007 ページ: 148-156

  • [学会発表] 中央ユーラシアと東部ユーラシア:方法としての地域、舞台としての地域2021

    • 著者名/発表者名
      杉山清彦
    • 学会等名
      The 1st International Conference of the Institute of Humanities Korea Plus at Dongguk University: The Dynamics of East Eurasian Material and Culture
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] イスラーム帝国:保護/隷属の回路と「イスラーム」帝国2021

    • 著者名/発表者名
      清水和裕
    • 学会等名
      日本オリエント学会第63回大会
  • [学会発表] Vakhushti Khan and Georgians in Khuzestan2021

    • 著者名/発表者名
      MAEDA Hirotake
    • 学会等名
      Ilia State University G. Tsereteli Institute of Oriental Studies International Webinar History of Georgians in Khuzestan
    • 国際学会
  • [学会発表] 近年における「色目人」研究の展開:「漢人」形成史への展望を兼ねて2021

    • 著者名/発表者名
      舩田善之
    • 学会等名
      中国四国歴史学地理学協会2021年度大会
  • [学会発表] 王子たちの処遇:サラーフ・アッディーン(サラディン)のファーティマ朝廃絶について2021

    • 著者名/発表者名
      柳谷あゆみ
    • 学会等名
      日本学術振興会カイロ研究連絡センター2021年度第11回定例懇話会
    • 招待講演
  • [学会発表] ザンギー朝の解体と存続:「バイト」の変容2021

    • 著者名/発表者名
      柳谷あゆみ
    • 学会等名
      三田史学会大会東洋史部会
  • [図書] 中華世界の再編とユーラシア東部(鈴木宏節「トルコ系遊牧民の台頭」115-145分担執筆)2022

    • 著者名/発表者名
      荒川 正晴(責任編集)
    • 総ページ数
      322
    • 出版者
      岩波書店
    • ISBN
      9784000114165
  • [図書] 東アジアの王権と秩序(杉山清彦「大清帝国の王権と君主位:マンジュ王権としての一試論」571-585分担執筆)2021

    • 著者名/発表者名
      伊東貴之(編)
    • 総ページ数
      948
    • 出版者
      汲古書院
    • ISBN
      9784762966965
  • [図書] The Safavid World (Hirotake Maeda, “Against all odds: the Safavids and the Georgians”, 125-143)2021

    • 著者名/発表者名
      Rudi Matthee ed.
    • 総ページ数
      766
    • 出版者
      Routledge
    • ISBN
      9780367773281
  • [図書] 元朝の歴史(舩田善之「元代「四階級制」説のその後:「モンゴル人第一主義」と色目人をめぐって」19-30分担執筆)2021

    • 著者名/発表者名
      櫻井智美、飯山知保、森田憲司、渡辺健哉(編)
    • 総ページ数
      322
    • 出版者
      勉誠出版
    • ISBN
      9784585325024
  • [図書] 都市からひもとく西アジア(柳谷あゆみ「「二つの春の母」モスルの十二・十三世紀:ザンギー朝下の建設と破壊」32-47分担執筆)2021

    • 著者名/発表者名
      守川知子(編)
    • 総ページ数
      272
    • 出版者
      勉誠出版
    • ISBN
      9784585325109
  • [図書] 金(女真)と宋(伊藤一馬「北宋の最強軍団とその担い手たち」67-108分担執筆)2021

    • 著者名/発表者名
      古松崇志・伊藤一馬・井黒忍
    • 総ページ数
      169
    • 出版者
      研文出版
    • ISBN
      9784876364657

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公開日: 2023-12-25  

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