研究課題/領域番号 |
19H00551
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
田端 雅進 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究専門員 (40353768)
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研究分担者 |
高野 麻理子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (10353749)
渡辺 敦史 九州大学, 農学研究院, 准教授 (10360471)
井城 泰一 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所 林木育種センター, 主任研究員 等 (40370845)
本多 貴之 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (40409462)
小谷 二郎 石川県農林総合研究センター(林業試験場), 石川県農林総合研究センター(林業試験場), 研究員(移行) (40450811)
黒田 克史 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (90399379)
福田 健二 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (30208954)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 漆 / ウルシ / シグナル物質 / 傷害樹脂道 |
研究実績の概要 |
今年度はシグナル物質のエチレン(エスレル)を濃度別(0、10mM、100mM、300mM、500mM)に各5本ずつ幹に塗布して1週間後に1cmのコルクボーラ―で穴をあけ、約1ヶ月後に穴から流出した漆滲出長を測定した結果、漆滲出長が100mM と300mMの濃度で大きくなることを明らかにした他、エスレルを処理した漆がよく出るウルシクローンの内樹皮で形成層に沿って傷害樹脂道が形成されていることを確認した。また、ウルシで発現する遺伝子配列を網羅的に単離し、遺伝子数は67,951配列であることを明らかにした。さらに、2018年に採取した二戸産初・盛辺漆、および信州産初・盛辺漆の4試料で得られたアセトンパウダー量は0.81~2.58g、ラッカーゼ活性量は3.89~39.78mAbs/minで、各試料を等電点電気泳動により分離精製し、クマシー染色した結果、pI 3.5~9.30の間に多数のバンドが検出されることを明らかにし、グアヤコールを用いて等電点電気泳動したゲル中のラッカーゼ活性を発色検出した結果、各試料ともpI 3.5~4.55の範囲に等電点をもつ3個のアイソザイム(pI 4.13、4.23、4.34)と、pI 7.35~9.30の範囲に等電点をもつ5個のアイソザイム(pI 8.15、8.47、8.60、8.94、9.30)を検出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は漆がよく出るウルシクローンと漆があまり出ないウルシクローンに、傷とシグナル物質のエチレン(エスレル)の塗布濃度を変えたときの漆滲出長を測定し、濃度別にウルシクローンの滲出長を評価した他、傷害樹脂道がエスレルを処理したウルシクローンの内樹皮で形成されていることを確認した。さらに、組織分析時に遺伝子解析試料を採取し、次世代シーケンサーなどを利用して発現する遺伝子を取得した他、漆の硬化に関与するラッカーゼについて漆液から精製した後、精製ラッカーゼのpI値を測定した。以上の結果は当初の目的を達成しており、おおむね順調に進展していると考えた。
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今後の研究の推進方策 |
シグナル物質のエチレン(エスレル)の最適な濃度を処理したウルシクローンで漆滲出量と成分を明らかにする他、光学顕微鏡などを用いてエスレルを処理したウルシクローンの内樹皮で樹脂道数や密度など形態的特徴を解析し、その違いを数値化する。また、ウルシの幹について発現するラッカーゼ遺伝子の塩基配列を明らかにする。さらに、等電点電気泳動により分離精製した各アイソザイムの分子量とN末端アミノ酸配列を明らかにする。
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