研究課題/領域番号 |
19H00555
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
赤嶺 淳 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (90336701)
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研究分担者 |
長津 一史 東洋大学, 社会学部, 教授 (20324676)
濱田 武士 北海学園大学, 経済学部, 教授 (80345404)
福永 真弓 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (70509207)
濱田 信吾 大阪樟蔭女子大学, 学芸学部, 准教授 (00734518)
高橋 五月 法政大学, 人間環境学部, 准教授 (50791084)
大元 鈴子 鳥取大学, 地域学部, 准教授 (70715036)
井頭 昌彦 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (70533321)
久保 明教 一橋大学, 大学院社会学研究科, 准教授 (00723868)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 油脂間競争 / 外国人研修生 / 外国人実習生 / サプライチェーン / 偶発性 / リスク |
研究実績の概要 |
COVID19の感染拡大により、予定していたフィールドワークのうち、すべての海外調査が実施できなかったものの、不十分とはいえ国内調査の一部を実施できたことは、さいわいであった。研究代表者の赤嶺は、20世紀初頭にはじまった南氷洋捕鯨における鯨油生産の拡大を、欧州地域におけるマーガリン需要に着目し、技術と資源の絡まりあいの偶発性を指摘した。同時に鯨油産業の変遷史は、おなじくマーガリン原料となった満洲を中心とする大豆油や東南アジアを中心とするヤシ油(ココナツ油)とアフリカと東南アジアを中心とするパーム油などとの油脂間競争を視野にいれておこなうべき点をあきらかにした。長津は、宮城県気仙沼市において、マグロ類を主とする遠洋・近海漁業の社会史ならびに同業における外国人雇用の歴史過程に関する予備調査を実施した。また、『みなと新聞』等の、これらに関する在地一次資料を入手し、その分析に着手した。サケ類、スケソウダラ、ニシンの大産地であり、それらの魚卵の供給地でもある極東地域の魚卵のサプライチェーンを研究する濱田武士は、集荷地としての釜山の機能について調査し、釜山には大型水産冷蔵庫が軒を連ね、ロシアと日本を仲介するエージェンシーが営業し、ロシア船員の休養地や船舶を修繕するドッグがあるなど、物流機能、仲介機能、船舶の修繕機能が集積していることから、ロシアの漁業会社にとって販売リスクが少なく、船舶のメンテナンスも同時におこなえうるメリットがあることをあきらかにした。大元は沖縄県の恩納村漁協において、モズク養殖によるサンゴ保全を流通にのせて加工・消費サイドと一緒におこなう仕組みについての聞き取りならびに、特定多数(≠不特定多数)の消費者向けの水産物の価値の流通についてパルシステム生協連合への聞き取りを実施した。現在、それらの成果について論文を投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID19の感染拡大により、予定していたフィールドワークのほとんどが実施できなかった一方で、文献収集とその分析に十分な時間を費やすことができたことは、本研究プロジェクトの方向性の修正であるとともに、本研究の可能性を拓くものである。とくに海外でデジタル資料の公開が進んでいることは、これまでにないことであり、メンバー間での情報交換を密におこない、より積極的に活用していく次第である。また、オンラインで適宜、情報交換をおこなうことができ、共同研究のあらたな方法を開拓しつつある。とはいえ、オンラインで開催される国際学会は、既知の研究者との交流には申し分ないものの、未知な研究者と知りあう機会は限定的であることが悔やまれる。その意味では、オンラインでの海外の研究者との交流策について、より積極的に模索していく所存である。現在、研究分担者と海外の学術雑誌に特集号を組むべく、論文を執筆中であり、執筆者間でのすりあわせをおこなっているところである。それらがまとまった特集として刊行されれば、海外で関連する研究を推進している未知の研究者との交流に弾みがつくものと期待している。
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今後の研究の推進方策 |
調査地域によっては、2021年度の後半にはフィールドワークが実施できるもの、と期待している。同時に、2020年度に収集した文献の分析を並行しておこない、関連事項のレビュー論文を複数、執筆することを計画している。そのためにも、2021年度も資料収集を継続する。将来的には、そうしたレビュー論文を束ね、水産物のサプライチェーンに関する教科書的な一般書の刊行を企画している。その企画を推進するため、分担者の福永と大元にも協力してもらい、「食と食様式に関する勉協会(Food & Foodways勉協会) 」をたちあげ、研究代表者・分担者が指導する大学院生や関連研究に関心をもつ人びとにも拓いた研究会を組織したところである。2021年度も、科研のメンバー以外に拓いた研究会を複数回(基本的に第4金曜日の午前に開催予定)組織し、サプライチェーンと食様式の変遷について、多角的に研究していく所存である。
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