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2021 年度 実績報告書

重層化する不確実性へのレジリエンス:水産物サプライチェーン研究の課題と実践

研究課題

研究課題/領域番号 19H00555
研究機関一橋大学

研究代表者

赤嶺 淳  一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (90336701)

研究分担者 長津 一史  東洋大学, 社会学部, 教授 (20324676)
福永 真弓  東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (70509207)
大元 鈴子  鳥取大学, 地域学部, 准教授 (70715036)
高橋 五月  法政大学, 人間環境学部, 教授 (50791084)
濱田 信吾  大阪樟蔭女子大学, 学芸学部, 准教授 (00734518)
濱田 武士  北海学園大学, 経済学部, 教授 (80345404)
久保 明教  一橋大学, 大学院社会学研究科, 准教授 (00723868)
井頭 昌彦  一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (70533321)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2024-03-31
キーワード技術継承 / 外国人材 / サプライチェーン / 小規模水産物 / 偶発性 / リスク・マネージメント
研究実績の概要

研究代表者の赤嶺は、2021年6月中旬より7月末まで共同船舶株式会社が所有する捕鯨母船日新丸(8,145GT)に乗船し、同社が21NP-1Wと呼ぶ、三陸沖におけるニタリクジラ漁を参与観察する機会を得た。途中7月9日より7月16日まで捕鯨船第三勇新丸(742GT)に移動し、ニタリクジラ13頭の探鯨と捕獲・渡鯨に立ちあい、日新丸船団がおこなった探鯨から捕獲、渡鯨、解剖、パン立て、急冷、出荷にいたる全工程と、総勢110余名におよぶ船団の安全運行のために甲板部・機関部・司厨部らが作業する一部始終を学ぶことができた。「現場に立つ」ことがフィールドワークの基本であり、その意味で「捕鯨」という現場と「航海」という現場のふたつの現場を体験したことは、捕鯨史を再解釈するうえで有意義であった。2019年6月末に日本が国際捕鯨委員会を脱退し、同年7月より排他的経済水域内における捕鯨を再開して3年目の操業に参加したわけであったが、①2019年度に入社し、調査捕鯨を経験していない乗組員が3割弱に達すること、②製造部の新卒者の離職率が高く、さまざまな技術継承が問題となっていること、③冷凍ではない生鮮肉を仙台に水揚げし、あらたな鯨肉市場を開拓しようとしていることなど、共同船舶としても大きな変革期にあることがあきらかとなった。長津は宮城県三陸沿岸を中心にマグロ漁業の展開と外国人依存の歴史過程に関する聞き取り調査をおこなうとともに、同テーマについてインドネシア・中ジャワ州に住むインドネシア漁船員にオンラインでインタビューを実施した。大元は生産地と生産者の持続可能な水産物の適切な流通経路と規模の調査のために、あらたに島根県隠岐の島における学校給食での島産水産物の供給状況の調査を開始し、特にコロナ禍における小規模水産物生産者の需要の低下に際し、より緊密な関係性をもつ新規供給先の開拓が必要なことをあきらかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

新型コロナウィルスの感染拡大により、海外調査ができなくなった環境下の2年度目となったわけであるが、もともと国内と海外とでマルチサイテッドなフィールドワークを計画していたため、2021年度は国内における調査を優先することができた。とくに代表者の赤嶺は、乗船後の10日間の感染予防対策期間を経た後は洋上に隔離された環境のなか、通常通りのフィールドワークをおこなうことができた。この貴重な体験は、今後、順次公表していく予定であるが、まずは調査を実施できたことを関係者に感謝したい。メンバー各自も国内でこれまでおこなってきた調査を可能な範囲で継続するとともに、関連する先行研究の収集とレビューをおこなうことに徹した。対面での研究交流ができなかったものの、オンライン開催の国際学会で発表するなど、成果発表がではじめており、国内外の学術雑誌に投稿中も少なからずある。とはいえ、2021年度内に刊行された投稿論文が少なかったことは反省すべきであり、その点は2022年度以降に改善できる見込みである。赤嶺・福永・大元を共同代表とし、日本におけるFood Studiesを活性化するために2020年度末に組織したFood & Foodways勉強会も、オンラインで6回開催することができた。共同代表らが指導する大学院生をはじめ、他大学の関係者も参加し、次世代研究者の育成も視野にいれた研究活動を多面的に実施中である。

今後の研究の推進方策

2022年度以降は、新型コロナウィルスの感染状況を見据えつつ、国内調査にくわえ、海外での調査と国際学会への参加を再開できるものと期待している。この2年間、それぞれが先行研究のレビューを中心に研究してきたわけで、今後は、そうした経験をもとに、よりよいフィールドワークと成果還元ができるものと考えている。オンライン・対面を問わず、それぞれのメリットを考慮しながら、国内外での学会での研究発表を積極的におこなう。最終年度のパネル組織を念頭に、さまざまな可能性を模索・検討する。共同研究としての成果を高めていくため、調査成果の交換・共有を目的として、すでに2022年度の1回目の研究会を2022年4月18日に開催し、調査の進行にあわせ、7月と10月、1月に開催すること、適宜、講師を招聘し、メンバー以外にもひらいた講演会等を開催することを確認した。

  • 研究成果

    (23件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 8件、 招待講演 12件) 図書 (6件)

  • [雑誌論文] オホーツク海で発生した2つの事件と日ロ関係2021

    • 著者名/発表者名
      濱田武士
    • 雑誌名

      ボストーク

      巻: 47 ページ: 3-7

  • [雑誌論文] コントロールされた多義の誤謬 : ヴィヴェイロス・デ・カストロにおける人類学的翻訳2021

    • 著者名/発表者名
      久保明教
    • 雑誌名

      くにたち人類学研究

      巻: 14 ページ: 1-18

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Resumption of Commercial Whaling and Whale Meat Foodways2022

    • 著者名/発表者名
      Akamine Jun
    • 学会等名
      Association for Asian Studies, the 2022 Annual Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] Conspiracies and Coalitions in Japanese Environmental Humanities2022

    • 著者名/発表者名
      Takahashi Satsuki
    • 学会等名
      Association for Asian Studies, the 2022 Annual Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] Crisis and Sustainability in Japanese Foodways2022

    • 著者名/発表者名
      Hamada Shingo
    • 学会等名
      Association for Asian Studies, the 2022 Annual Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] 「海と生きる」ことの意味2022

    • 著者名/発表者名
      長津一史
    • 学会等名
      東洋大学社会学部国際社会学科・連携シンポジウム 防潮堤から考える――東日本大震災11年後の人づくりとまちづくり
    • 招待講演
  • [学会発表] Private collections make public heritage: Displaying whaling as an industry in Japan2021

    • 著者名/発表者名
      Akamine Jun
    • 学会等名
      The Rise of Private Museums and Heritage in East and Southeast Asia
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 『マツタケ』に学ぶ――陸と海をつなぐ地球大のモノ研究をめざして2021

    • 著者名/発表者名
      赤嶺淳
    • 学会等名
      「人新世」時代のヒトと自然を考える
    • 招待講演
  • [学会発表] 三陸沖にニタリクジラを追う――捕鯨工船日新丸乗船調査2021

    • 著者名/発表者名
      赤嶺淳
    • 学会等名
      文明社会における食の布置
    • 招待講演
  • [学会発表] “Surf-and-Turf”: An Overview of Japanese Foods, Cultures and Environments2021

    • 著者名/発表者名
      Hamada Shingo
    • 学会等名
      Feria De Negocios Virtual Ganbare Nikkei, Colombia Japanese Association
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Using Marine Organic Matter to Nurture the Soil2021

    • 著者名/発表者名
      Hamada Shingo
    • 学会等名
      Stone Barns Center Element: The COAST, Stone Barns Center for Food and Agriculture
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Social Dynamics of Diasporic Indonesian in Japan: Towards a Comparative Social History2021

    • 著者名/発表者名
      Nagatsu Kazufumi
    • 学会等名
      Japanese Studies in Indonesia: Crisis and Reorientation
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] The Sea Peoples’ Arts of not Being Governed: Genealogy of the Bajau and its Political Settings in Nusantara2021

    • 著者名/発表者名
      Nagatsu Kazufumi
    • 学会等名
      Seaways, People, and Goods on the Edge of Polities: Decolonizing Maritime Studies in Indonesia
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 気仙沼とインドネシア――マグロをめぐる移動社会史の素描2021

    • 著者名/発表者名
      長津一史
    • 学会等名
      山形大学移民社会における多文化共生論
    • 招待講演
  • [学会発表] マグロとアジアと日本人――気仙沼のインドネシア人船員・実習生からみえること2021

    • 著者名/発表者名
      長津一史
    • 学会等名
      村井吉敬の小さな民からの発想 Part. 2
    • 招待講演
  • [学会発表] 移動と混淆――東南アジア・バジャウ人にみる共生の技法2021

    • 著者名/発表者名
      長津一史
    • 学会等名
      村井吉敬の小さな民からの発想 Part. 4
    • 招待講演
  • [学会発表] KKV(DSI)論争にきちんとカタをつけるために2021

    • 著者名/発表者名
      井頭昌彦
    • 学会等名
      早稲田大学スポーツ科学学術院講演会
    • 招待講演
  • [図書] 『知っておきたい和食の文化』第5章「鯨食の地域性と保守性――コールドチェーンが変えた鯨食文化」(赤嶺淳)2022

    • 著者名/発表者名
      佐藤洋一郎、赤嶺淳
    • 総ページ数
      396
    • 出版者
      勉誠出版
    • ISBN
      9784585330011
  • [図書] 『海とヒトの関係学⑤ コモンズとしての海』7「バジャウ人の移動する生き様」(長津一史)2022

    • 著者名/発表者名
      秋道智彌、角南篤、長津一史
    • 総ページ数
      281
    • 出版者
      西日本出版社
    • ISBN
      9784908443695
  • [図書] Sea Nomads of Southeast Asia: From Past to the Present. Ch7. Maritime diaspora and creolisation: A genealogy of the Sama Bajau in Insular Southeast Asia (Nagatsu Kazufumi).2021

    • 著者名/発表者名
      Berenice Bellina, Roger Blench, Jean-Christophe Galipaud, Nagatsu Kazufumi
    • 総ページ数
      383
    • 出版者
      NUS Press Singapore
    • ISBN
      9789813251250
  • [図書] 『大学的オーストラリアガイド――こだわりの歩き方』第4章「アジアとオーストラリアを繋ぐ人びと――海域世界の視座から」(長津一史・間瀬朋子)2021

    • 著者名/発表者名
      鎌田真弓、長津一史
    • 総ページ数
      304
    • 出版者
      昭和堂
    • ISBN
      9784812220160
  • [図書] The Cultural Politics of Food, Taste and Identity: A Global Perspective. Ch3 Heritagization Of Fermented Taste In Southwestern Fukui, Japan (Hamada Shingo)2021

    • 著者名/発表者名
      Steffan I.A. Diaz, Hamada Shingo
    • 総ページ数
      280
    • 出版者
      Bloomsbury USA Academics
    • ISBN
      9781350162723
  • [図書] 『わざの人類学』第5章「ポイエーシスとテクノロジーの狭間で――家庭料理における「手作り」の変容」(久保明教)2021

    • 著者名/発表者名
      床呂郁哉、久保明教
    • 総ページ数
      368
    • 出版者
      京都大学学術出版会
    • ISBN
      9784814003754

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公開日: 2022-12-28  

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