研究課題/領域番号 |
19H00558
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤倉 達郎 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (80419449)
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研究分担者 |
木村 周平 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (10512246)
田辺 明生 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (30262215)
内山田 康 筑波大学, 人文社会系, 教授 (50344841)
デスーザ ローハン 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (60767903)
中村 沙絵 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (80751205)
竹田 晋也 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (90212026)
中溝 和弥 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (90596793)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ネパール / インド / スリランカ / 災害 / 宗教復興 |
研究実績の概要 |
本研究では大規模な災害を経験し、復興に向けたさまざまな活動が行われているネパール、インド、スリランカを事例にとり、大規模な災害の後に生活世界がどのように再編されるかをフィールドワークによって調査し、比較の視点から記述・分析することを目的にする。その焦点は南アジアであるが、そこに限定せず、日本や東南アジア、ヨーロッパをフィールドとする研究者も分担者として加わり、広い比較の視点から研究を進める。初年度である2019年度には各分担者がそれぞれの担当するフィールドであるネパール、インド、スリランカ、日本で長期のフィールドワークを行なった。これに加えて、研究代表者はポーランドのポズナンで行われたInternational Union of Anthropological and Ethnological Sciences (IUAES)国際学会において、ポスト紛争期の民主化のダイナミクスについての発表を行うとともに、ポーランドのワルシャワ、クラクフ、アウシュヴィッツにおいて、戦争の記憶と戦後復興についての調査を行なった。また日本の熊本県水俣市において、公害事件と被害・紛争の継続について、研究代表者と分担者による合同フィールドワークを行なった。また研究分担者は原子力発電所事故をめぐって日本、ヨーロッパ、オセアニア、アメリカをつなぐ長い連鎖についての調査を開始している。このようにグローバルな拡がりを持つ連鎖に「復興」の問題系を位置づけ、それを南アジア地域研究にフィードバックすべく、Annual Conference on South Asia, 日本南アジア学会をはじめとする、アメリカ、日本、イギリス、オランダ、シンガポール等で行われた南アジア関連の学会、セミナー、シンポジウムにおいて発表や討議を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、災害からの復興において課題になる「トラウマとケア」「復興のポリティカル・エコノミーとマイノリティ」「環境と生業の変容」という三つの問題群を文化社会的、政治経済的、生態環境的諸側面から連関的・複合的に分析することを目指している。これらの多層的・複合的な過程の結節点に立ち現れる、多様化や均質化、排除や包摂、リスクやレジリエンスへと向かう多様なモメントを把捉することがこの研究の目的である。本研究では、大規模な災害や紛争を「ホリスティックなイベント」としてとらえ、単なる原状回復や防災力の強化のみではなく、地域が抱えてきた社会的・政治的・生態環境的コンフリクトの可視化とそれらへのさまざまな対応という視点からポスト災害期を探究しようとしている。初年度においては上記三つの問題系について、それぞれの分担者がこれまで行なってきた専門的な研究蓄積を、ポスト災害/紛争期に特有の問題と関連づけるという作業を行なった。また「トラウマ」「ポリティカル・エコノミー」「環境・生業」の三つの問題系の結節点として、公害、エネルギー問題、人口移動、過疎化等が共同研究の具体的課題として検討され、調査・研究が行われている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度終盤からはじまったパンデミックの影響により、とくに国外でのフィールドワークができなくなっている。また海外の研究協力者を招へいして開催する予定であった国際ワークショップも延期になった。状況が好転するまでは、文献調査、これまでに蓄積されたデータの分析、海外の研究協力者や研究機関への委託調査、オンラインを活用した研究会や国際ワークショップを通して研究を推進していく。
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