研究課題/領域番号 |
19H00584
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
福元 健太郎 学習院大学, 法学部, 教授 (50272414)
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研究分担者 |
稲増 一憲 関西学院大学, 社会学部, 教授 (10582041)
遠藤 晶久 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 准教授 (80597815)
尾野 嘉邦 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (70598664)
善教 将大 関西学院大学, 法学部, 准教授 (50625085)
肥前 洋一 高知工科大学, 経済・マネジメント学群, 教授 (10344459)
三輪 洋文 学習院大学, 法学部, 准教授 (20780258)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 行動政治学 / オンライン実験 / 非合理的政治行動 / 政治知識 / イデオロギー |
研究実績の概要 |
稲増は、システム脅威場面において、候補者が相補的ジェンダーステレオタイプでの優勢次元に沿う戦略をとることの効果を検討する実験を行ったところ、「暖かい」男性候補者の評価は高じるが「暖かい」女性候補者の評価は低下するという予測とは逆の結果が得られた。遠藤は、日本における新型コロナ関連情報(見かけ上の)情報源と情報接触後の態度・行動形成の関係を検討する実験を行い、政治的な要因が情報の信頼度に与える影響を検討した。尾野は、法の担い手や法の支配に対する市民の支持に関して、市民の裁判官に対する認識に関する研究の後続研究として、検察官や弁護士の人種や性別が司法に対する市民の認識に与える影響をコンジョイント実験とヴィネット実験を行った。善教は、11月に行われた特別区設置住民投票の前後に大阪市民を対象とするパネル調査・実験を実施した。調査結果は『中央公論』や『選挙研究』などの学術雑誌に発表済みまたは発表予定であり、結果をまとめた単著を2021年11月に出版する予定である。肥前は、投票率の低下を説明する文の中にブキャナンが挙げる投票の6つの特性に関する記述のうちいくつかをランダムに加えることで、投票と購買の意思決定の相違を探る実験のパイロット調査を実施した。福元は、来年度以降に担当する実験の計画・実施に向けて、文献の渉猟や学会・研究会への参加を通じて、情報収集を行った。三輪は、昨年度に実施した有権者による党派性概念の理解を調べる実験の結果を日本政治学会で報告した。また、政治家の性別と政策的主張の説得力に関する実験の論文を海外学術誌に掲載した。尾野と共同で衆参における女性議員比率の差に関する実験の準備も進めた。 9月28日と10月2日に実験実施前公開研究集会を開き、稲増、尾野・三輪、肥前が上述した研究を、善教が「メディア・フレーミングと政治不信」をそれぞれ報告した。部外者から30人参加申し込みがあった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り5本のオンライン実験を実施しただけでなく、論文を学術誌や学会で報告できたため。
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今後の研究の推進方策 |
稲増は、地方選挙の候補者評価における相補的ジェンダーステレオタイプの影響、ならびに有権者の政治関心に対する自身が保持する政治知識についてのバイアスの影響を検証するためのWeb調査実験を実施する。遠藤は、政治における女性の記述的代表に対する認識が政治態度にもたらす影響についてウェブ実験を行う。欧米に比べると男女平等に対する意識が高いとはいえない日本で検証することで、主にアメリカで実施されてきた先行研究の主張の一般化可能性を検討する。尾野は、裁判官の人種や性別といった個人的特性が人々の司法に対する信頼や公平性の評価に与える影響や有権者が無意識に抱くバイアスの有無について探るため、判事の属性を無作為に変化させたサーベイ実験を行う。善教は、感情的分極化が政治信頼や政治的決定の受容度に影響を与えるという指摘があるものの、政治信頼との関係はもとより、分極化と政治的決定への受容の関係を明らかにする研究は多くないことから、感情的分極化と政治信頼の関係を検証するサーベイ実験を行う。肥前は、投票と購買という2つの選択の意思決定はどのような点で異なると人々に認識されているか、および購買とは異なる投票のどの性質が人々を投票へ誘う効果を持つかを探る予備調査のデータを分析したうえで、質問を改善して本調査を実施する。福元は、人が政党の数を認知する時に、有効政党数を用いているかを検討する。具体的には、様々な分布の政党の得票率を見せて、被験者が政党は実質上いくつあると思うかを尋ねる。三輪は、一昨年度に実施し、昨年度に学会報告した、各国の有権者にとっての党派性の意味に関する実験の論文を修正し、海外学術誌への投稿を目指す。また、女性政治家の政策的主張が男性政治家のそれよりも支持されにくいという仮説を日米での実験で検証する。 日本政治学会、計量・数理政治研究会の前後に、実験実施前後公開研究集会を開催する。
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