研究課題/領域番号 |
19H00588
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大森 裕浩 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (60251188)
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研究分担者 |
黒瀬 雄大 筑波大学, システム情報系, 助教 (20713910)
高橋 慎 法政大学, 経営学部, 准教授 (20723852)
入江 薫 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 講師 (20789169)
國濱 剛 関西学院大学, 経済学部, 准教授 (40779716)
石原 庸博 大阪経済大学, 経営学部, 講師 (60609072)
渡部 敏明 一橋大学, 経済研究所, 教授 (90254135)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ベイズ統計学 / マルコフ連鎖モンテカルロ法 / 確率的ボラティリティ変動モデル / 実現ボラティリティ / リスク管理 / 高頻度データ / 潜在変数 / ランダム回答法 |
研究実績の概要 |
大森は、多次元時系列に因子構造を考え、因子に動学的構造を持たせることで分散及び相関係数の変化をモデル化した。また多変量2値データに対して多変量プロビットモデルの拡張を回答者のプライバシーを保護するランダム回答モデルの枠組みで行った。高橋・大森・渡部は、金融資産の収益率とそのボラティリティを同時に定式化するRealized Stochastic Volatility、RSV)モデルと、異なるクラスのボラティリティモデルのボラティリティ予測の精度を比較し、RSVモデルの予測精度が他のモデルよりも優れていることを示した。さらに渡部は、日中の周期性や経済指標の公表の影響を考慮した日中SVモデルに日次RVを加えたモデルとそのベイズ推定法を提案し、実証分析において有用性を示した。
石原は、リスク管理に重要なサイズファクター・バリューファクターの代理変数を簡便に観測できる高頻度データを用いて定義し、その実現共分散を計算した。マーケット・サイズ・バリューファクターの分散・相関の変動を多変量の確率的ボラティリティ変動モデルを用いて分析し、そのボラティリティの非対称性について調査した。黒瀬は、金融資産日次収益率の分散項の時間変動のモデリング、特に確率的ボラティリティモデル等の収益率の分散項の時間変動モデルに日中価格レンジの情報を組み込む研究を行った。
入江は、ガンマ分布およびウィシャート分布の性質を応用した実データの逐次解析の研究を行った。またガンマ分布の縮小事前分布への応用について理論的な考察を行った。國濱は、多次元カウントデータに対してパラメータ推定の計算時間を短縮する統計手法の開発を行った。各周辺分布において,要素が有限個の混合正規分布による近似を用いることで,事後分布からのサンプリングの時間短縮を可能とした。またクロスバリデーションよりも計算負荷を小さくする推定アルゴリズムを考案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者・分担者によるこれまでの査読付き論文は、過去3年間で、Journal of Business and Economic Statistics、Econometrics and Statistics (4論文)、Applied Stochastic Models in Business and Industry、Annals of Applied Statistics(2論文)、 Bayesian Analysis、Journal of Time Series Analysis、Japanese Journal of Statistics and Data Science、Communication in Statistics-Simulation and Computation、日本統計学会誌」(2論文)、「統計数理」などに順調に掲載が進んでいる。学会発表も2019・2020・2021年度統計関連学会連合大会, 2019・2020年度国際ベイズ分析学会東アジア大会(ISBA-EAC, 国際学会), 2019・2020・2021年度の計算・計量ファイナンス学会(CFE2019, CFE2020, CFE2021国際学会)、2019・2021年度の計量経済学・統計学国際会議(EcoSta2019, EcoSta2021国際会議), 2019・2020・2021年ベイズ計量経済研究集会(2021年はISBA EFab Sectionと共催、国際会議)、Bayesian Inference in Stochastic Processes 12 (BISP12、国際会議)など、国内外で積極的に行っている。また国際ベイズ分析学会東アジア大会・ベイズ計量経済研究集会においては、開催の主催も行っている。
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今後の研究の推進方策 |
大森は、引き続き因子構造をもつ多次元収益率の確率的ボラティリティ変動(SV)モデルを継続して開発し、ポートフォリオ・パフォーマンスを改善するため日中高頻度データによる実現共分散行列の情報を取り入れる。渡部は、確率ボラティリティ変動モデルにおけるリターンとボラティリティの相関の時変化、Heterogeneous Autoregressiveモデルにおけるパラメータと誤差分散の時変化、ボラティリティのボラティリティと分散リスクプレミアムとの関係の実証分析等を行う。高橋・大森・渡部は昨年度に続き、金融資産の収益率とその変動を同時に定式化する実現SV(RSV)モデルを拡張し、ボラティリティ予測や収益率の分位点予測のパフォーマンスが改善されるかを検証する。黒瀬は、金融資産の日次収益率の挙動を時間変動する分散項を中心にGARCH型モデルによりモデル化する。特に日中価格レンジの情報を組み込む拡張を検討する。入江は、罰則項によって点推定量に望ましい振る舞いを促す正則化の手法を、統計モデルの視点で考察する。具体的には、複数の罰則項の指数に対応する確率分布を研究する。時系列分析の文脈において、二つの罰則項から誘導されるマルコフ連鎖の性質を明らかにし、高次元時系列モデルにおけるスパース性の実現に応用する。國濱は、高次元な多変量データ分析において,平均だけでなく共分散構造にも影響を与える共変量が存在する場合のベイズ統計手法の開発に取り組む。共分散行列は半正定値という性質を持つため,目的変数の平均のみに影響を与える場合とは異なり,その制約を考慮に入れた共変量のモデリングが必要となる。そこで,各観測値に対して潜在変数を導入することで半正定値の制約を満たすようなベイズ統計モデルを考案することを目指す。
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