研究課題/領域番号 |
19H00594
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
石川 城太 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (80240761)
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研究分担者 |
阿部 顕三 中央大学, 経済学部, 教授 (00175902)
大久保 敏弘 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (80510255)
木村 福成 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (90265918)
趙 来勲 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (70261394)
冨浦 英一 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (40273065)
古澤 泰治 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (80272095)
椋 寛 学習院大学, 経済学部, 教授 (90365065)
柳川 範之 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (80255588)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | デジタルエコノミー / 情報通信技術(ICT) / ビッグデータ / 国際分業 / グローバリゼーション |
研究実績の概要 |
(課題1)デジタルエコノミーによる企業の立地と国際貿易の変容:①東アジア地域の電子商取引の現状と政策課題に関する共同研究の成果を15章からなる書籍として取りまとめた。②国の間で越境電子商取引の利用率に大きな違いが生じる要因について検討した。③越境電子商取引の浸透は新型コロナの国際貿易に対する影響を緩和すると推測されるが、その推測を実証的に検証した。④ゲームコンソールを代表例とするプラットフォームに、サービス提供者と消費者が同時に参入する二面市場を考え、プラットフォームの並行輸入許可の効果を理論的に分析した。⑤経済産業研究所で別途実施した日本の企業に対するデジタル・データの越境移転に関するアンケート調査結果を、政府統計(企業活動基本調査)のミクロデータとリンクさせて統計的分析を行った。⑥デジタル化の進展はデジタル化された財・サービスや生産要素の輸送コストを大幅に低下させるが、この特徴を取り入れた理論モデルを構築した。 (課題2)デジタル技術の発達に伴う国内的・国際的コンフリクト:①多国籍企業の移転価格操作に関してOECDが定めたアームズレングス原則が、タックスヘイブンが存在する場合に無形資産のライセンス戦略や経済厚生にどのような影響を及ぼすかを理論的に分析した。②デジタルエコノミー下では企業の立地選択が容易になるが、多国籍企業誘致のための政府間税率引下げ競争の理論的フレームワークを新たに提示した。③ロボット化と人工知能の採用が労働市場に与える影響を分析するためグローバル・バリュー・チェーンを組み込んだ国際貿易モデルを構築した。④コロナ禍でデジタル経済がどのように浸透しているかについて1万人を対象にNIRA総研と共同調査を行った。⑤メコン地域の長期的開発戦略を検討する中で、デジタル技術の利用によって包括的かつ持続可能な経済成長をどのように実現していくのかを分析し政策提言を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は2つの研究課題からなるが、それぞれ、モデルの構築とそれに基づく理論分析、及び、データの収集とそれに基づく実証分析が核となっている。両研究課題とも理論・実証分析のバランスがとれた形で研究が進行している。 2020年度に学術雑誌への公刊は33本(うち査読付きは27本)、図書の刊行は9冊となっており、研究成果も順調に発信できている。 ただ、新型コロナのため、国内外の学会やワークショップの多くがキャンセルされており、研究成果の発表に支障をきたしている。科研費を用いて主催した国際会議(Hitotsubashi Conference on International Trade & FDI 2020、 Hawaii-Hitotsubashi-Keio Workshop on International Economics、 Winter International Trade Seminar 2021)はオンライン開催とせざるを得なかった。また出張も制限されているため、とくに海外の研究者との共同研究にも支障をきたしている。
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今後の研究の推進方策 |
現時点まで研究はおおむね順調に進展しているので、今後もこのペースで研究を推進していく。 理論分析では、これまでに構築した基本モデルの分析を進めるとともに、基本モデルをさらに精緻化および発展させる。そして、理論モデルからできるだけ有意義な結論や政策的な含意を引き出す。実証分析では、デジタルエコノミーにおけるグローバル企業活動の実態把握の基礎的情報の整理を行い、また構築した理論モデルを活用して分析を進める。 理論分析・実証分析とも、分析において得られた結果(途中経過も含む)は、ワークショップや学会などで積極的に報告し、フィードバックを得て研究の質を高め、その結果をできるだけ早期に出版・刊行に結びつけるよう努力する。 新型コロナウイルスの蔓延やその感染防止策によって、グローバル化の実態は大きく変容しつつある。たとえば、コロナウィルス・ショックは、製造業の生産ネットワークを大きく変える可能性を有しており、これを機会にサービス業を含めデジタル技術の使用が加速度的に進むかも知れない。直近の国際貿易データなどを収集してどのような研究が可能かを検討し、より現実性のある研究を目指す。 新型コロナが収束しない場合には、主催する国際会議や共同研究では、引き続きオンラインを活用するなど、工夫を凝らす。
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