研究課題/領域番号 |
19H00598
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
清田 耕造 慶應義塾大学, 産業研究所(三田), 教授 (10306863)
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研究分担者 |
寳多 康弘 南山大学, 経済学部, 教授 (60327137)
村田 安寧 日本大学, 経済学部, 教授 (40336508)
松浦 寿幸 慶應義塾大学, 産業研究所(三田), 准教授 (20456304)
中島 賢太郎 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 准教授 (60507698)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | グローバル化 / 産業内調整 / 産業間調整 / 空間的調整 |
研究実績の概要 |
サブテーマAでは,中国からの最終財と中間財の輸入拡大が産業間の雇用調整に及ぼす影響を分析した。日米を含む6カ国を分析し,最終財輸入は製造業雇用に負の影響をもたらすが,中間財輸入はその影響を緩和・相殺する場合があることを明らかにした。また,グローバル化に伴う産業間調整について理論的・実証的に分析し,ヘクシャー=オリーン・モデルから導かれる逆説は各国の技術の違いや貿易不均衡を考慮すると解消できることを明らかにした。サブテーマBでは,海外直接投資と輸出の補完関係がどの程度持続するか,変容するかを検討するため,中国に進出する日系子会社の貿易取引額データを用いて分析を行った。その結果,海外生産が進むと日本から海外進出先への輸出は高付加価値財に絞られるが,取引は長期にわたることが示された。
サブテーマCでは,国内生産ネットワークが企業の国境を越えた生産調整に与える影響について,不完備情報ゲームを用いて分析し,得られた結論を実証的に検証した。その結果,Katz-Bonacich中心性の高い企業は海外直接投資を行う傾向にあること,また,そのような企業の海外直接投資は,他企業の海外直接投資を引きつけることを示した。サブテーマDでは,労働者が産業間を移動可能であり,財の多様性や生産性が各産業内で内生的に決定される独占的競争モデルの市場均衡と最適配分を導出し,イギリスとフランスの企業データを用いて産業内・産業間の歪みの大きさを定量的に明らかにした。
サブテーマEでは,各国独自の製品基準が,内国民待遇の原則の下で,地域協定を通じて地域間で調和され,さらに多国間の国際的な調和につながるかどうかを理論的に分析した。世界厚生を最大化する国際的な製品基準の調和が達成されるのは,製品基準を引き上げることで抑制できる負の外部性が,越境するとしてもその程度が小さいときに限られることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の研究実績としては,査読付き学術誌掲載論文12本,学会報告8件の成果があった。このため,プロジェクト2年目の令和2年度は当初の計画に従って研究を進めることができていると言える。また,サブテーマCの分析用データベースの構築も順調に進んでおり、予備的分析を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
サブテーマAは中国からの輸入の拡大と雇用調整である。このテーマは中国からの輸入の拡大と雇用調整について,最終財と中間財の輸入を区別しつつ分析するというものである。このサブテーマについては国際的な学術雑誌への成果の掲載を済ませたため,本年度は本テーマと関連する脱工業化の空間的調整の分析の取りまとめ,学術雑誌への掲載を目指す。サブテーマBはグローバル化と製品・業種転換,高付加価値化である。このテーマは昨年度までに輸入品競争と業種転換,および製品転換の分析にある程度の目途がついたため,本年度は製品構成の高度化についての分析を進める予定である。
サブテーマCは企業の雇用調整と国境を越えた生産調整である。このテーマでは,引き続きデータベース構築を進め,日本企業の海外進出が当該企業の国内雇用調整および,それが集積の経済を通じて周辺既存企業にもたらす影響について分析の取りまとめを行うことを目指す。サブテーマDは新財開発と厚生効果である。ここでは近年の貿易理論の厚生効果の分析で捨象されてきた新財導入という側面に着目し,新財の需要関数に基づいた貿易利益の新しい定量化手法を開発する。
サブテーマEは各国・地域の規制制度,非貿易財産業と厚生効果である。このテーマでは,これまでに分析を深めた企業の異質性を考慮した非貿易財産業モデルの論文を精緻化して投稿する。また,規制の調和と相互承認を比較できるモデルの構築・分析に取り組む。
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