認知神経科学の手法を用いて、不正直が利益を生むような局面で正直であろうとする振る舞いの神経基盤を明らかにすることを目指す。不正直さを抑制する要因として、前頭前野からの自己制御ではなく、皮質下を中心とする情動関連領域の関与を重視し、嘘をつくことへの嫌悪感や嘘をつく相手に対する共感のプロセスに焦点を当てた検討を計画している。 不正直が利益を生む局面での報酬系の脳活動を検討するという先行研究の方向性とは異なる観点から、明確な学術的問いが立てられており、この分野の先駆者としての独自性が認められる。個々の研究計画の具体性も高く、パーキンソン病患者や収監中の囚人をも対象とすることで研究の射程を広げている。心理学と神経科学の融合的研究として成果を生むことが期待される。
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