研究実績の概要 |
令和2年度は、潜在的連合テスト(IAT; Implicit Association Test)を用いた行動実験による研究成果について、学会発表及び論文執筆を行った。具体的には、「嘘をついてはいけない」とする潜在的態度が、利己的な嘘を抑制する要因として作用することが明らかとなった。執筆した論文は現在、海外の学術雑誌に投稿し、査読中である。脳機能画像研究では、Speer et al. (2020, Proc Natl Acad Sci USA)で用いられた実験パラダイムを改変し、他者利益が関わる状況での正直さの神経基盤に関する実験に着手した。令和3年度の研究においても、データ取得を継続すると共に、データ分析も進める予定である。またパーキンソン病を対象とした神経心理学的研究では、嘘をつくことで他者が不利益を被る状況を想定した認知課題を用いて、患者群及び健常対照群のデータ取得を行った。
これらの研究に加えて、上述のSpeer et al.による正直さの神経基盤の研究に対するコメント論文を出版した(Abe, 2020, Proc Natl Acad Sci USA)。また、パーキンソン病の神経心理学的研究における関連プロジェクトとして進めた内発的動機付けの研究に関する論文(Shigemune et al., 2021, Neurol Sci)と、情動と動機付けの神経基盤に関する総説論文(Cromewell et al., 2020, Neurosci Biobehav Rev)を出版した。これらの論文に加えて、嘘に関する心理学及び神経科学の研究成果をまとめた一般向けの書籍を出版した(阿部, 2021)。
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