研究実績の概要 |
令和3年度は、潜在的連合テスト(IAT; Implicit Association Test)を用いた行動実験による研究成果について、論文発表を行った(Hatta et al., 2022, J Exp Soc Psychol)。「嘘をついてはいけない」とする潜在的態度が、利己的な嘘を抑制する要因として作用する可能性を示した知見であり、本研究プロジェクトにおける重要な成果の一つとなった。本研究では、事前登録による追試も行っているが、結果はあくまで有意傾向であったため、慎重な解釈が必要と考えられる。 脳機能画像研究では、他者利益が関わる状況での正直さの神経基盤に関する実験を進めていたが、金銭報酬を用いた課題では嘘をつく動機づけが十分機能しない可能性が示唆された。そのため、今年度は課題の改良を行った。また、研究プロジェクト開始時に予定していた、サイコパスに関する国際共同研究の実施が困難となったことから、日本人を対象とした研究に着手し、基礎的なデータの取得・分析を実施した。 パーキンソン病を対象とした神経心理学的研究については、嘘をつくことで他者が不利益を被る状況を想定した認知課題を用いて、患者群及び健常対照群のデータ取得を継続している。新型コロナウイルスの問題もあり、データ取得の完了には相当の時間がかかる見込みである。 これらの研究に加えて、脳機能画像研究における関連プロジェクトとして実施した報酬系と恋愛感情の研究に関する論文を出版した(Ueda & Abe, 2021, Psychol Sci)。
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