研究実績の概要 |
令和4年度は、昨年度までのデータを踏まえて、実験パラダイムを改良した上で脳機能画像実験を開始した。特に他者への協調性に着目し、不正行為を行う割合の個人差との関連を脳機能との観点から検討する実験であり、現在までの行動データからは、想定していた個人差が確認されている。行動データと脳機能との関連性については、主に前頭葉機能、報酬系、心の理論に関わる領域等が対象となる。 パーキンソン病を対象とした神経心理学的研究については、嘘をつくことで他者が不利益を被る状況を想定した認知課題を用いて、患者群及び健常対照群のデータ取得を継続している。当初予定していた以上に、データ取得のための時間を要しているが、研究期間内にはデータ取得が完了する予定である。 これらの研究に加えて、日本人を対象としたサイコパスに関する脳構造画像研究の成果を論文として出版した(Chester et al., 2022, Cereb Cortex)。この研究では、サイコパス傾向と脳の灰白質容量との関係性を検討しており、脳機能と不正直さとの関係を調べるためのベースとなる知見である。なお、この研究のデータでは、白質を対象とした分析も進めている。また、パーキンソン病の神経心理学的研究における関連プロジェクトとして進めた、選択肢の損失に対する感受性に関する論文を出版した(Shigemune et al., 2022, Neuropsychologia)。
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