研究課題/領域番号 |
19H00630
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
上田 和夫 九州大学, 芸術工学研究院, 准教授 (80254316)
|
研究分担者 |
松尾 行雄 東北学院大学, 教養学部, 教授 (40323117)
Remijn GerardB. 九州大学, 芸術工学研究院, 准教授 (40467098)
竹市 博臣 国立研究開発法人理化学研究所, 情報統合本部, 専任技師 (60242020)
光藤 崇子 九州大学, 医学研究院, 特別研究員(RPD) (70423522)
平野 羊嗣 宮崎大学, 医学部, 准教授 (90567497)
Wolf Alexandra 国立研究開発法人理化学研究所, 革新知能統合研究センター, 基礎科学特別研究員 (70936955)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 時間窓 / 音声知覚 / 劣化音声 / 脳活動計測 / 眼球運動計測 |
研究実績の概要 |
通常の音声では声帯による周期的な振動から声の高さに関する情報が得られる。この情報は音声が断続されたときに音声の断片をつなぎ合わせるために重要であることがわかっている。今年度は以下のようなモザイク音声を用いた研究を実施した。すなわち,声の高さに関する情報を取り除き,さらに言葉を表す記号としての情報(音声の振幅包絡)を,いくつかの周波数帯域における階段状に劣化させた。そして,(1) モザイク音声を断続すると大幅に了解度が低下すること,(2) 一方で,階段状の振幅包絡を延長し,断続によって生じた空白区間を徐々に埋めていくと,断続区間長 40 ミリ秒までの範囲内では劇的に了解度が向上することが示された。このことから,空白が埋められることによってモザイク音声の断片がよりまとまりやすくなり,了解度が向上したのではないかと考え,音響学におけるトップジャーナルである国際査読誌,米国音響学会誌に論文を発表したところ,この学術雑誌からオンライン・ジャーナルクラブに招待され,発表,討論を行った。この続編となる実験もすでに実施し,論文の下書きを開始している。この他に (1) 周波数および時間の両次元で断続を行った「市松音声」について,4, 8, 16, 20 帯域の条件を含めて了解度を測定する実験,(2) 市松音声の無音区画を雑音で置換し(市松音声と逆位相の市松雑音で無音区画を充填),雑音のレベルを操作して了解度への影響を調べる実験,(3) 健常者と精神疾患患者の画像刺激に対する眼球運動計測から,脳内リズムの違いについて考察する研究,(4) 市松音声の聴取時における脳活動を脳磁図で調べる実験,(5) 話速が異なる音声に対し,特定の周波数もしくは全体を局所時間反転音声させたときの音声明瞭度の変化を調べる実験を実施し,論文執筆に向けてデータの蓄積を行った。このうち (1) はすでに投稿準備中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
音響学におけるトップジャーナルである米国音響学会誌から論文を出版することができ,オンライン・ジャーナルクラブに招待されたため。さらに今後の論文執筆に貢献する貴重なデータが得られたため。
|
今後の研究の推進方策 |
すでに得られたデータに関しては出版を急ぐ。「市松音声」に関する研究から,因子分析の結果得られた 4 周波数帯域が音声知覚にとって重要な独立した四つの手がかりを表していること,また音声の了解度に対する刺激区間長の影響はこれら四帯域において変わらないことが実証されたため,周波数帯域にかかわらず了解度を低下させる要因となる区間長 160 ミリ秒という条件が聴覚のどのような特性と関係しているのかを,市松音声の両耳分離呈示,二話者の音声を組み合わせた市松交代音声などの刺激を用いて今後,解明していく。さらに,調波複合音を用いて周波数帯域の交代が聴覚体制化におよぼす影響を調べることにより,聴覚のどのような一般的な特性が聴覚体制化および音脈分凝と関係しているのかを解明していく。
|