研究課題/領域番号 |
19H00635
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
山岸 典子 立命館大学, グローバル教養学部, 教授 (50395125)
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研究分担者 |
満上 育久 広島市立大学, 情報科学研究科, 准教授 (00467458)
NAWA Norberto・E 国立研究開発法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳機能解析研究室, 主任研究員 (40395116)
大須 理英子 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (60374112)
熊野 宏昭 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (90280875)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 未病 / 注意 / うつ病 / 見える化 / 改善 / 認知神経科学 / 認知心理学 |
研究実績の概要 |
人は気分が落ち込むと、周りの物事に広く注意が向かなくなり、更にうつ病になると、嫌な事から注意が離せなくなるなど、うつ病による注意機能の変化が知られている。近年、健常者においても幸福度の変化が注意機能に影響を及ぼすことが分かってきた。 本研究では、注意とこころの未病(うつに繋がるこころの不調の兆候)との関係を認知神経科学的に解明する。その上で、注意の特性をスマートフォンなどで測定し、機械学習を用いて幸福度を推定する技術を確立し、刻々と変化する注意状態からこころの未病を早期に検出可能かを明らかにする。更に、VRを利用した注意機能の強化訓練を行うことで、こころの未病を改善し、こころを健康状態に戻す認知手法を開発する。 具体的には以下の5点を明らかにする:(1)「こころの未病」状態が「健康」とも「明らかな病気」とも区別される状態で存在するかを神経科学的に明らかにする。(2)幸福度が、複数ある注意機能のうち、どの機能に影響を与えるのかを明らかにする。(3)幸福度と関係のある注意機能を計測することで、幸福度を推定し、さらに、こころの未病状態を推定することができるのかを明らかにする。(4)幸福度と関係のある注意機能を強化訓練することで、幸福度を向上させ、こころの未病状態の「改善」ができるのかを明らかにする。(5)注意訓練前後の脳活動変化から、こころの未病の「改善」の神経基盤を明らかにする。 2019年度は、上記のうち(1),(2),(3)を中心に進めた。その結果、こころの未病はBDI指標などにより、一般大学生の1-2割に存在することが明らかとなった。また、幸福度は注意の解像度のような機能に影響を与えている可能性を、VRを利用した行動実験の頭部運動データの解析から示唆を得た。注意課題のパフォーマンスからこころの状態の推定については、推定を行うAI技術の研究開発に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、研究分担者との打ち合わせを2回、またオンラインによる情報交換等、積極的に行い順調な研究の開始ができた。その中で、研究目的の確認、具体的な研究方法への意見交換、情報交換が活発に進められた。また研究員の募集も行われ、専任の特別研究員を10月より雇用開始することができた。しかしながら、新型コロナウィルスの問題が起こり、2月以降、人を研究参加者として行う実験がすべて実施禁止となっている。このため、この社会情勢により、研究の進捗が計画どおり進むか懸念材料となっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、さらにグループ間の情報、研究交流を進めるとともに、各グループの大きな目標に向かって、具体的な研究成果につながるような方策をとっていく。具体的には、注意と感情の関係のメカニズムの解明のための心理、認知、神経科学(fMRI)実験を行い、仮説を検証していく。また、注意パフォーマンスから、こころの状態を推定することについては、最新のAI技術を駆使し、その実現を目指す。さらに、注意訓練を利用した臨床応用について、基礎的なメカニズムの解明を目指すとともに、より効果の高い注意訓練方法の研究開発を行い、臨床応用へつなげていく方針をとる。
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