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2021 年度 実績報告書

パルス超強磁場XFEL散乱による磁場誘起電子相転移の研究

研究課題

研究課題/領域番号 19H00647
研究機関東北大学

研究代表者

野尻 浩之  東北大学, 金属材料研究所, 教授 (80189399)

研究分担者 桑原 慶太郎  茨城大学, 理工学研究科(理学野), 教授 (90315747)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワード強磁場 / X線自由電子レーザー / 電子相転移 / X線散乱 / 極端条件
研究実績の概要

本年度は、YBCOのCDW転移について、SACLA、LCLSで強磁場実験を実施した。実験では、磁場誘起のCDWと比較するために、YBa2Cu3O6.67 の光誘起正常状態を調べた。これまで、光分光実験において、クエンチされた超伝導状態が非平衡状態として生じることが予測されてきたものの、詳細はわかってなかった。今回の実験では、光励起下でおきるCDWと強磁場下のCDWの両者を、X線自由電子レーザーで観測して比較することにより、非平衡の光励起状態が、強磁場下でおこる平衡状態のCDWと、類似していることを実験的に見出した。具体的には、光ポンプによって、超伝導CuO2平面に壊れたペアリング状態が生じると、これが3次元CDWの前駆体の核形成につながることを観察した。この結果は、光励起の下では非平衡状態から平衡状態へのクロスオーバーが生じること、磁場の増加による渦液体状態の拡大は、光による壊れたクーパー対生成と対応しており、同一の物理過程に帰着することを示す。
引き続いて、グラファイトのCDWについて、一連の実験を行った。電子構造を考慮して、CDW/SDWに関連するネスティングベクトルに対応する逆格子空間の主な位置を、高強度のピンクビームにおいて探索した。実験条件としては、密度波転移が生じる40テスラかつ3 K以下の低温領域で測定を行えたが、超格子反射を見出すには至らなかった。その一方で、格子定数の磁場依存性については、密度波転移の複数の異なる相間の転移で、僅かな異常が見出され、これらは、密度波転移において見られた音速の異常と同様に格子の異常に関与していると考えられる。この点を明らかにするために、高分解能測定を可能にする後方散乱配置の装置を開発し、動作を確認した。最終年度において、高分解能測定が可能な、モノクロビームを用いて、格子の異常を確認する計画である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

今年度は、コロナ禍で、実施出来なかった海外のLCLSでの実験が、2年ぶりに再会し、SACLAでの実験とともに、X線回折実験の進展が図られた。YBCOのCDW転移およびグラファイトの密度波転移について、それぞれ、実験の進展があり、これらの研究は順調に進んでいる。その一方で、様々な部品の供給に大幅な遅延が生じたため、結果として、幾つかの実験の実施が3-4ヶ月、先延ばしになり、繰越により対応する事を余儀なくされたので、やや遅れていると評価する。

今後の研究の推進方策

2022年度においては、コロナの状況も改善して、実験のための海外渡航も可能になったため、当初計画を実現するべく、着実に実験を行って行く。SACLAにおいては、モノクロビームを用いた実験を2回予定しており、これらにより、
グラファイトの密度波転移について、結果が得られることが期待される。併せて、保留されていた、LCLSの実験についても推進する。LCLSでは、マシンのアップグレートにより、高エネルギーの利用が可能になったため、これまでの反射配置での測定に加えて、透過配置でのX線回折が可能になり、よりバルクに近い状態が観測可能になるため、PDW状態の発見についての進捗も期待される。
この他、より強磁場での測定についても、コイルの開発などが終了したため、実際の実験に組込むことで、これまでより高い磁場領域へのアクセスが可能になるため、これらを実験に用いてゆく計画である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)

  • [国際共同研究] SLAC National Accelerator Laboratory(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      SLAC National Accelerator Laboratory
  • [国際共同研究] POSTECH(韓国)

    • 国名
      韓国
    • 外国機関名
      POSTECH
  • [雑誌論文] Characterization of photoinduced normal state through charge density wave in superconducting YBa2Cu3O6.672022

    • 著者名/発表者名
      Hoyoung Jang 他16名 Hiroyuki Nojiri他4名
    • 雑誌名

      SCIENCE ADVANCES

      巻: 8 ページ: abk0832

    • DOI

      10.1126/sciadv.abk0832

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 超強磁場X線回折装置の開発と酸化物超伝導体への応用2021

    • 著者名/発表者名
      野尻浩之
    • 学会等名
      日本物理学会第76回年次大会
  • [学会発表] X-ray and high magnetic fieldsProbing extreme states of correlated electrons systems2021

    • 著者名/発表者名
      Hiroyuki Nojiri
    • 学会等名
      Symposium on the Helmholtz International Beamline for Extreme Fields at the European XFEL
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Applications to Magnetic Field Induced Phase Transitions-2021

    • 著者名/発表者名
      Hiroyuki Nojiri
    • 学会等名
      SACLA User Meeting 2021
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2023-12-25  

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