研究課題
本年度は、高温超伝導体の電荷密度波(CDW)について、YBCO系と比較するために、CDWとスピン密度波が相関するとされるLSCO系について研究を行った。 La1.885Sr0.115CuO4 に対して、最大 24 テスラ磁場を印可し、その結果以下の点が明らかになった。1)低温では、観察された CDW ピークにより、材料内に 2 つの異なる領域が存在し。1 つは超伝導と共存する短距離 CDW を含むマジョリティ相、もう 1 つは静的スピン密度波 (SDW) と共存する長距離 CDW を含むマイノリティ相である。2)磁場が増加すると、CDW は最初SDW と同様に連続的に緩やかに成長するが、さらに高磁場で渦液体状態に入ると CDW の強度が突然増加する。この結果は、CDW と動ける超伝導渦との強い結合を意味し、 CDW 振幅の増大と局所超伝導ペアリングの結合が、温度磁場相図に従って変化することを示す。この結果を、YBCOの結果と合わせると、CDWやSDWの出現の背景に共通の基盤としてPDW状態の存在が示唆される。次に、グラファイトの密度波転移について、モノクロビームを用いて、高分解能の格子定数の磁場依存性の測定を行った。低磁場では、c軸方向の格子長は一旦縮んだ後で、強磁場で増大する振る舞いが見られ、過去の定常磁場における磁歪の符合反転を確認した。強磁場相の磁歪は過去のパルス磁場下のマクロ測定に比べて絶対値が小さいが、単調増加ではなく、磁場中で不連続な変化を示し、異常のある磁場は、電気抵抗による相境界と概ね一致した。これらの結果から、超音波測定によって示されたように、グラファイトの密度波転移では、格子異常が誘起されることが明らかになった。その一方、格子定数の変化が緩やかになる領域で超格子反射が見られないことから、格子系との結合は弱く、相転移は電子的な起源であると考えられる。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nature Communications
巻: 14 ページ: 733
10.1038/s41467-023-36203-x
QUANTUM BEAM SCIENCE
巻: 7 ページ: 1
10.3390/qubs7010001