研究課題/領域番号 |
19H00650
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中辻 知 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (70362431)
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研究分担者 |
松永 隆佑 東京大学, 物性研究所, 准教授 (50615309)
是常 隆 東北大学, 理学研究科, 准教授 (90391953)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | トポロジー / ワイル半金属 / 磁気光学カー効果 / 磁気光学カー効果 / 異常ネルンスト効果 / 異常ホール効果 / フラストレート磁性 / ラッティンジャー半金属 |
研究実績の概要 |
カイラル反強磁性体Mn3X (X = Sn,Ge) におけるワイルフェルミオンの検証を多角的におこなった。本研究ではこれまで報告していたMn3X 系の巨大異常ホール効果および異常ネルンスト効果の結果に最新の研究結果を新たに加え、包括的なワイルフェルミオンの物理を確立した。特に、Mn3Geは0.3 K までカイラル磁気秩序状態を保つため、磁気揺らぎが抑えられた十分低温の領域においてワイルフェルミオンに由来する物理を研究することが可能である。Mn3Ge におけるカイラル異常やMn3Sn におけるプラナーホール効果等の磁気輸送特性の発見はこれらの物質中でワイルフェルミオンが存在することを示している。また、白金、タングステンを用いた2層の薄膜デバイスを作成し、電流印加によるスピン軌道トルクにより、ワイル半金属状態のスイッチングに成功した。
次に、トポロジカル磁性体における巨大横熱電係数をFe3X(X = Ga, Al) 系において見出した。室温で過去最大値に匹敵する巨大異常ネルンスト効果を示し、また100 ℃の高温から-100 ℃の低温まで高い性能を維持する。さらに、厚さ数十ナノメートルのFe3Al,Fe3Ga の薄膜作製にも成功し、ゼロ磁場で世界最高の異常ネルンスト係数を示すことを示した。第一原理計算との比較から、本研究で発見された巨大な異常ネルンスト効果は、ノーダルウェブというトポロジカルなバンド構造に由来していることが明らかになった。異常ネルンスト効果の増強にはベリー曲率と状態密度を同時に大きくすることが重要であり、ノーダルウェブはまさにそのような条件を満たしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
鉄を用いた二元系において、世界最大級の大きな磁気熱電効果を発見したことは、非常に意義深い。特に、この発見は物理的に興味深いだけでなく、応用上も大変重要である。すなわち従来のゼーベック効果を用いた熱電技術が不得手であった薄膜化・フレキシブル化・大面積化に利があり、効率的な熱電変換を可能にするポテンシャルを秘めている。
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今後の研究の推進方策 |
1)ワイル反強磁性体Mn3Sn この系はワイル反強磁性体であることが分かっているが、ワイル点が磁気相転移を経て、どのように生成・消失するのかをフェルミレベル依存性と温度依存性から調べる。特に、ワイル点の存在によりカイラル異常が明瞭に表れることもはっきりしてきた。このことをさらに実験的に様々なMn組成や温度での測定をするめることで、ワイル半金属性の現れる相図を作成する。これにより磁気構造とワイル半金属性との関係を解明する。 2)トポロジカル磁性体Fe3Al ノーダルラインセミメタルとして知られる我々の開発したFe3X(X=Ga,Al)については、その巨大な電気磁気効果の発現の起源を調べるために、フェルミレベルのチューニングを行う。また、純良薄膜作成によりTHz分光の実験を進め、ノーダルラインセミメタルとスピン軌道効果によるギャップ生成の機構を明らかにする。
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