研究課題
近年、全く新しい概念を持った超伝導体が出現してきた。光誘起超伝導とトポロジカル超伝導体である。前者は、超短パルスレーザー光で生成した超伝導のヒッグス粒子が観測されることにより、光誘起超伝導のメカニズムを明らかにする事が出来る。一方、後者は、極限まで微小エネルギーを計測するARPESが可能になったことにより、素粒子では発見されていないマヨラナ粒子が固体内で発見される可能性が出てきた。本研究では、これまで築いた現有のレーザー光電子分光の装置(レーザー超高分解能極低温光電子分光装置とレーザー時間分解光電子分光装置)を有効に活用し、最大限に成果を上げるよう光誘起超伝導とトポロジカル超伝導の研究を行う。(1)レーザー超高分解能極低温光電子分光においては、すでに発見したトポロジカル超伝導体の研究をさらに深め、ほかにも同様なトポロジカル超伝導体がないかの探索を続ける。さらに、光電子顕微鏡(PEEM)を用いて超伝導体の微細構造の研究を始める。(2)レーザー時間分解光電子分光においては、すでに我々は鉄系超伝導体の母物質において初めて、光誘起超伝導の兆しを発見している。これらの研究をさらに発展させ、光誘起超伝導が確実に起きているかどうかを検証するために、特に、ポンプ光の近赤外光やテラヘルツ光の開発を行い、特定のフォノンを励起できるように時間分解光電子分光装置の改造を行う。また、鉄系以外にも光誘起超伝導を起こす物質がないかどうか物質探索も更に行う。この二つの光電子分光装置は、全国共同利用を通じて、様々な共同利用者の知恵を借り、新奇物質の開発や新奇物性の開発も行う。
1: 当初の計画以上に進展している
(1)昨年度から行っているレーザー超高分解能極低温光電子分光を用いて、鉄系超伝導体や超伝導体表面に存在するトポロジカル物質表面に発現するトポロジカル超伝導の研究を更に深化させた。また、故障していた光電子顕微鏡(PEEM)の修理を行い、以前通りの分解能を達成することができた。特に、以下の論文を出版し、新規トポロジカル物質の開発を行う事ができた。A weak topological insulator state in quasi-one-dimensional bismuth iodide, R.Noguchi, et. al.Nature, 566,518(2019)(2)レーザー時間分解光電子分光においては、世界でもまれな共同利用ができる中赤外、テラヘルツ光励起の時間分解光電子分光の開発を行い、特定のフォノンを励起できるように時間分解光電子分光装置の改造を行った。実験装置を用いて、鉄系超伝導関係物質の光誘起相転移の研究を行った。特に、以下の二つの論文を出版することができ、新しい時間分解現象の研究を行うことができた。・Photoinduced possible superconducting state with long-lived disproportionate band filling in FeSe, T.Suzuki,et.al.,Commnn.Phys.2,115(2019)・Ultrafast nematic-orbital excitation in FeSe, T.Shimojima,et.al.,Nature Commun.10, 41467(2019)
本研究では、これまで築いた現有のレーザー光電子分光の装置(レーザー超高分解能極低温光電子分光装置とレーザー時間分解光電子分光装置)を有効に活用し、最大限に成果を上げるよう光誘起超伝導とトポロジカル超伝導の研究を行う予定である。(1)行っているレーザー超高分解能極低温光電子分光は順調に成果を出しているので、このまま、更に深化させる予定である。(2)レーザー時間分解光電子分光においては、世界でもまれな共同利用ができる中赤外、テラヘルツ光励起時間分解光電子分光装置を用いて、共同利用を通じて鉄系超伝導関係物質や鉄系以外の光誘起相転移の研究を行う。
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すべて 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 6件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
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