研究課題/領域番号 |
19H00655
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
林 好一 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20283632)
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研究分担者 |
大山 研司 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (60241569)
奥 隆之 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, サブリーダー (10301748)
松下 智裕 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (10373523)
八方 直久 広島市立大学, 情報科学研究科, 准教授 (30285431)
木村 耕治 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20772875)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 中性子ホログラフィー / 磁気散乱 / 局所構造 / 3D原子イメージング / 磁性材料 / 軽元素 |
研究実績の概要 |
磁気散乱を用いた中性子ホログラフィーの実証実験を行った。2019年度は、J-PARCのパルス白色中性子を用い、標準試料としてFeCo単結晶を用いた。ビームラインはBL10を利用した。回折計の上流側にSEOPと呼ばれる3Heスピンフィルターを用いた。内部の3Heの核スピンの方位を揃えることによって、SEOP内部を通過する中性子のスピンの方位を制御できる。試料磁化を飽和させ、構成する磁性原子の磁気モーメントの方位を揃えるために、ネオジム磁石で挟んで測定を行った。二軸ステージに試料をセットし、Coから放出されるγ線の強度をシンチレーションカウンターで測定した。ここでは、入射角を20°に固定し、回転角を0~360°で走査することによって磁気散乱中性子ホログラムの実証実験を行った。統計精度を稼ぐために、この条件下で100回程度同じ測定を行っている。また、中性子線のアップとダウンの効果も調べた。得られたγ線強度の角度依存性データを、中性子線の波長(0.36~6.59Å)ごとにプロットを行うことによって、強度プロファイルの中性子波長依存性を評価した。その結果、0.7Åより大きい波長領域では全体の回転角φにわたりγ線の強度があった。一方、0.7Å以下の波長領域では回転角φ= 86°、275°付近での強度のみが残り、それ以外の角度では中性子の波長が短くなるとともに急激に強度が減少した。φ= 86°、275°付近では、試料が、それを挟んであるネオジム磁石の陰になる配置であることから、0.7Å以下の波長領域でのγ線はネオジム磁石由来のものであり、この波長領域でのネオジム磁石に対する中性子の吸収が大きいことが分かった。逆に、0.7Å以上ではCoの吸収が大きいことが分かり、この波長領域のみでホログラムを構成すると良いこと判明した。今後は、アップとダウンスピンによる角度プロファイルの差分を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験・データ解析については、予定通り順調に進んでいる。また,関連の論文の投稿も行った。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度測定したFeCo単結晶のホログラムデータについて、アップとダウンスピンの差分を抽出するための方法論を確立する。また、2019年度のデータは入射角を固定したデータであるために、磁気散乱中性子ホログラフィーの実験の成否について十分な検証を行うことは難しい。従って、今後は入射角も大きな角度範囲でスキャンすることによって、4π立体角に近いホログラムを測定することを試みる。そこから、広い波数空間におけるアップとダウンスピン中性子によって測定したホログラムを比較することにより、精度よく、その差分の抽出を試み、磁気散乱中性子ホログラフィーの実験の成否について評価する。また、もう一つの重要課題である、水素のホログラム測定についても開始する。ここでは、既に実績のあるPdHなどの標準単結晶試料を準備し、多波長ホログラムの測定により、精度の良い原子像の再生を試みる。
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