研究課題/領域番号 |
19H00658
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
大槻 東巳 上智大学, 理工学部, 教授 (50201976)
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研究分担者 |
小布施 秀明 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (50415121)
今田 正俊 早稲田大学, 理工学術院, 上級研究員(研究院教授) (70143542)
羽田野 直道 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (70251402)
後藤 貴行 上智大学, 理工学部, 教授 (90215492)
SLEVIN KEITH 大阪大学, 大学院理学研究科, 准教授 (90294149)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | スケーリング理論 / Anderson転移 / 非エルミート系 / 量子多体系 / hyperuniformity / 準位統計 |
研究実績の概要 |
2022年度は非エルミート系の局在非局在現象を解析的・および数値的に解析した。非エルミート性の入れ方は様々である。例えば実対称行列で記述される系に非エルミート性を入れる場合,対称でないが実行列である場合,もしくは対称であるが複素行列の場合のふた通りが考えられる。こうして10の対称クラスに分類されていたエルミート系は,さらに38の非エルミート対称クラスに分類される。エルミート系なランダム量子系に非エルミート性を導入すると,臨界指数は変化することがわかったので,これより38の対称クラスに分類される非エルミートランダム系の局在非局在転移を議論する必要が生じる。しかしながら,この研究プロジェクトで,38の非エルミート対称クラスにおける臨界特性は,エルミート系の局在非局在転移と対応づけられることが明らかになった。また,この対応関係を数値的に検証した。臨界指数だけでなく,波動関数の共形不変性,マルチフラクタル次元もエルミート系のもので記述できることも明らかにできた。今度はエネルギー準位統計についも調べる予定である。特にエネルギー準位統計が38のクラスに分類できるのか,それともいくつかにまとめられるのかを,解析計算と数値計算によって調べる。特に多体電子系について調べ,多体局在の知見を得る。 昨年度は,ランダム系と規則系の間の準周期系における電子密度分布をhyperuniformityという概念で特徴づけ,hyperuniformityが電子相互作用によってどのように変わるかを議論した。今年度は特にAubry-Andreモデルにおいてこのhyperuniformityと局在非局在転移の関係を議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
エルミート系は10の対称クラスに分類できる。そのうち3つはWigner-Dysonクラスというよく知られ,研究も進んでいるものであるが,本研究ではその他の普遍クラスも精力的に調べた。こうして10の対称クラスほぼ全ての臨界指数を明らかにできた。その副産物として,非エルミート系の局在・非局在転移が全てエルミート系の臨界現象で記述できることを発見できた。この非エルミート系からエルミート系のマッピングにより,38の非エルミート系対称クラスの臨界現象が予言できることになったことで,研究が大きく進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
非エルミート系で予想外の進展があったのでこの系における準位統計と対称クラスの関係を調べていきたい。また,相互作用するランダム量子系の研究をより進める。Bogoliubov-de Gennesクラスの臨界現象についても研究を行い,さらにランダムな量子回路における観測誘起相転移の研究もランダム量子系のスケーリング理論という観点から議論したい。
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